【10月7日 AFP】フィンランド西部にある世界最北とされるワイナリー。ここで良いワインを造る秘訣(ひけつ)は雪だ。それもなるべく厚い雪の層が良いのだという。

 冬の最低気温は氷点下36度にもなるが、雪の層が断熱材の働きをしてくれるおかげで、フィンランド産ワインのパイオニア、カールロ・ネリマルッカ(Kaarlo Nelimarkka)さん(74)のリースリング、メルロー、シャルドネは凍らずに済む。

 北極圏から南に400キロ、フィンランド西部の都市バーサ(Vaasa)にある自身のワイナリー「スンドム(Sundom)」でネリマルッカさんが心配するのは冬の霜よりもむしろ強すぎる太陽の光だ。

「冬は問題ではない。最大の問題は夏が短過ぎることと春先の強い日光だ。土がまだ凍っているのにブドウが発芽することがあるんだ」と、かつてバーサ市の行政官だったネリマルッカさんは言う。

 ネリマルッカさんのワイナリーでは、豊作の年には白、赤、ロゼ合わせて最大400本を生産する。マドレーヌ・アンジュヴ、ゲヴュルツトラミネール、ソラリスという耐寒性の高い品種のブドウを組み合わせた白ワイン「スンドム・ホワイト」はこのワイナリーの名物になっている。

 フィンランドの高名なワイン愛好家は、「バランスが良く、サラダやイセエビ料理と相性が良い。産地を知らずに飲めばフィンランドの小さなワイナリーで生産されたとは思いもしないだろう」と絶賛した。

 フィンランドのワイン生産者はごく少ない。それで生計を立てている人は皆無だ。ネリマルッカさんもワイン生産者として身を立てようとしたことがあったが、その夢は欧州連合(EU)の官僚主義に阻まれた。

 ネリマルッカさんがどれだけ丹念にワインを作っても、それを「ワイン」と呼ぶことは許されない。EUは公式にはフィンランドをワイン生産地としていないからだ。

 ネリマルッカさんは自分で作ったものを販売できないため、有料でブドウ園に迎えた団体客に無料のサービスとしてワインのテイスティングを提供している。