【9月26日 AFP】米国防総省は25日、米軍などが訓練したシリア反体制派の戦闘員が、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系の武装組織「アルヌスラ戦線(Al-Nusra Front)」に、支配地域を無事に通行させてもらう見返りとして弾薬などを引き渡していたと明らかにした。

 米国防総省は先に、米国などが訓練した戦闘員の一部が離反したり装備を敵に渡したりしているという報道を否定していた。それとは対照的な今回の発表は衝撃的だ。

 国防総省のジェフ・デービス(Jeff Davis)報道官は、「残念ながら、新シリア軍(New Syrian ForcesNSF)がピックアップトラック6台と弾薬の一部をアルヌスラ戦線と思われる相手に提供したと述べていることを本日、把握した」と述べた。

 また、イラクとシリアにおけるイスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」の掃討作戦を監督している米中央軍(US Central Command)のパトリック・ライダー(Patrick Ryder)報道官も、新シリア軍の戦闘員らがアルヌスラ戦線の活動地域の安全な通行と引き換えに装備を引き渡していたと明らかにした。ライダー報道官によると、新シリア軍がアルヌスラ戦線に渡したピックアップトラックと弾薬は、米国主導の有志連合から支給された装備の約25%に当たるという。

 AFPの取材に応じた国防総省関係者は、新シリア軍側は今のところ離反者は出ていないと話しているが「われわれが知っているのは彼らが伝えてきたことだけだ」と強調した。

 今回の事態は、シリアでISと戦うため穏健派のシリア人戦闘員を「訓練し、装備を与える」という米国の取り組みにとって逆風だが、こうした事態は初めてではない。

 当初の計画では5億ドル(約600億円)をかけて、毎年約5400人のシリア反体制派の戦闘員を3年間にわたって育成することになっていたが、訓練にふさわしい対象者を見つけるのが難しく、実際に訓練を受けた人数は計画をはるかに下回っている。

 最初に訓練プログラムを終えた54人は、今年7月にアルヌスラ戦線の攻撃を受け、少なくとも1人が死亡した。国防総省は54人の身に何が起きたのか、十分に把握していない。

 第2陣の約70人は先週末シリアに送られたが、その直後から戦闘員の離反や、他勢力への装備の引き渡しなどの情報がツイッター(Twitter)で流れていた。(c)AFP/Thomas WATKINS