■国ごとの「婉曲表現」

 カナダ・ケベック大学モントリオール校(University of Quebec at Montreal)で国境問題などを専門としているエリザベス・バレ(Elisabeth Vallet)氏は、言葉は極右政党にとって特に強力な道具だと述べ、フランスの極右政党、国民戦線(National FrontFN)が「移民の危険」という表現を使っていることを例に挙げる。「移民という呼び方は人間性を奪い去る方法で、一人一人の個人について語ることを打ち消してしまう方法だ。ある朝、一人の母親がどうして子どもたちを連れて砂漠を越え、小さな船で荒海を渡り、警察の催涙ガスに立ち向かおうと思ったのか、誰も疑問に思わない。それこそが最初の問いであるべきなのに」

 独特の婉曲表現がある国もある。スウェーデンのメディアは「EU移民」という言葉を使うが、これは数多く働きに来ているデンマーク人やフィンランド人のことではなく、広範な差別に直面してきたロマの人々を常に暗に指している。

 イタリアでは「難民」と「亡命希望者」に加え、独特な「プローフギ」という第3の言葉が使われている。「プローフギ」とは、ある国に到着はしたが、難民申請をまだ行っていないか、難民認定を受けていない状態の人々を表す。

 第2次世界大戦(World War II)以降で最多の人々が移動している状況で、この議論がすぐに決着することはないだろう。(c)AFP/Eric RANDOLPH