■法外な値段で自転車を購入

 ロシアのモスクワ(Moscow)へ飛んだ後は、列車で同国北西部のムルマンスク(Murmansk)まで行き、さらにノルウェー国境まで約20キロのニケリ(Nikel)を目指すのが一般的だ。そこで彼らは、大抵は法外な値段で、自転車を買う。なぜならば、ロシアとの国境にあるノルウェー側のストールスコーグ(Storskog)の検問所を難民が唯一、合法的に通れる方法が自転車だからだ。

 この国境の通過が許可されているのは「車両」に限られているが、自転車は車両とみなされている。ロシア側では徒歩での越境を認めていない。ノルウェー側では最近、難民を乗せて車両で通過した場合、高額の罰金が科せられるようになった。

 このため、国境に最も近いノルウェー側の町、キルケネス(Kirkenes)には真新しいものも含めて現在、約65台の自転車がたまっている。短期間の自転車の持ち主たちは、亡命申請のために当局がオスロへ連れて行ってしまった。

 自転車によるロシアとノルウェーの間の国境越えが多くみられるようになったのはここ数週間だが、昨年の冬には氷点下の気温のなか、雪に覆われた道を通過した強者もいた。オスロの難民中継センターにいたシリア人たちによれば、こうしたロシア経由のルートにかかる渡航費は3000~4000ユーロ(約40万~55万円)。亡命希望者を支援するノルウェーの団体NOASは「密航業者のルートで支払う額に比べれば、高くない」「しかも合法で危険もない」と語った。

 ノルウェーは欧州連合(EU)には加盟していないが、大半の欧州諸国間での自由な往来を定めたシェンゲン協定(Schengen Agreement)が適用される圏内に入っている。(c)AFP/Pierre-Henry DESHAYES