■「2歩進んで1歩下がる」動物保護への道のり

 こうしたタイでの動物愛護の流れについては、都市部を中心にペットを飼う人が増え、動物を友人や家族のように感じる人たちが増えたことが背景にあるとの見方もある。

 観光客に人気の象乗りも、動物愛護活動家たちの批判の的となっている。タイでゾウは国を象徴する動物だが、毎日、観光客を背中に乗せ酷使されているため、ゾウたちが大きなストレスにさらされているというのだ。8月末にはタイ北部で、暴れ出したゾウが飼育員を殺し、中国人観光客3人を背中に乗せたまま森林に逃げ込むという事件が起きている。

 そうしたなか、ゾウが置かれた境遇への懸念から倫理感に基づいた保護区域も増えている。ここで観光客たちは自然環境下で生息するゾウを見学できるが、象乗りはできない。

 だが、執行を徹底させない限り、法の効力は限定的だ。

 同国の法規制の徹底について、その限界を最も顕著に示しているのが、物議を醸している西部カンチャナブリ(Kanchanaburi)の仏教寺院「タイガーテンプル(Wat Pha Luang Ta Bua)」だろう。

 当局は、寺院が適切な手続きを経ないまま150頭近くのトラを飼っていると主張。数か月前から、トラを捕獲しようとする当局関係者たちと、これを阻止しようとする僧侶たちとの対立が続いている。

 しかし、この問題を解決する能力はタイ政府にはない。僧侶と対峙(たいじ)していると国民から思われたくないこともその一因だが、これほど多数のトラを直ちに収容できる場所がないのも事実だ。

 同国における動物保護への道のりについて、タイ野生動物友好基金(Wildlife Friends of ThailandWFFT)のエドウィン・ウィーク(Edwin Wiek)氏は、2歩進んでは1歩下がる状態だと話し、法執行の現状が「最大の懸念」であると述べた。(c)AFP/Cyrielle CABOT、Narueporn ANANTACHINA