【9月7日 AFP】韓国のコールセンターに響く、同情のこもった大きな声。ボランティアたちは、連絡先の詳細、すなわち今も生存しているかどうかの確認をしながら、受話器の向こうにいる高齢者たちに大声で応対する。

 北朝鮮と韓国の間で最近、1950~53年の朝鮮戦争による離散家族の再会の場を設けることが決定されたことを受けて、ソウル(Seoul)にある赤十字(Red Cross)のコールセンターではボランティアたちが、名簿に載っている6万6000人以上に順番に電話をかけるという大変な作業を行っている。最も重要なのは忍耐力だ。

 この計画に関する両国の赤十字よる協議は7日に開始する。10月初旬に開催予定の再会行事に参加可能な韓国側の家族の名簿を作成する作業は切迫している。

 離散家族の再会が本格的に始まったのは、2000年のこと。この感動的な行事の真ん中に常に立ちはだかってきたのは時間、より厳密に言えば、十分な時間がないということだ。

 離散家族再会は当初、毎年恒例の行事だったが、両国関係の緊張によって、過去5年間では1度しか開催することができなかった。名簿で順番待ちをしている韓国人は80代や90代の人が多く、残された時間はまさに限られている。

■短くなる名簿、失望する高齢の離散家族

 再会行事への参加を申請した人々は1988年以降、13万人近くに上るが、その半数以上はその後、死亡しており、死亡率は年々増え続けている。毎回、行事に参加できるのはわずか数百人で、これまでに家族再会がかなったのは3668人にとどまっている。

 赤十字のボランティアたちが電話をかけているのは、離散家族再会のための第一段階に過ぎない。赤十字のウ・ガンホ(Woo Kwang-Ho)氏は「もう知りたくないと思っている人の数が増えていることにわれわれは気付いた。彼らは非常に失望している」と語る。また体が弱くなり、参加を検討できないという人も大勢いる。「現実問題として、この名簿にある名前は、今後10年のうちにほとんどが消えてしまうだろう」

 名簿から選ばれたからといって、自動的に再会行事への参加資格が得られるわけではない。今度は北朝鮮側がまず、その近親者が生存しているかどうかや、参加の意思があるかどうかを確認しなければならない。しかも、この段階でも何も保証はされていない。北朝鮮は過去にも何らかの対立を理由に、土壇場で再会行事を取り止めたことがある。

 再会行事は通常、数日間にわたって行われる。しかし再会の喜びの先にはまた、避けることのできない永遠の別れという悲しみが待っている。ソウルの離散家族協会のシム・クソブ(Shim Coo-Seob)代表は「近親者と連絡を取り続けることはできないので、再会後に多くの人々がめいってしまう。今こそ政府は、手紙のやりとりが可能な不断の経路を確保することに重点を置くべきだ」としている。(c)AFP/Lim Chang-Won