■「求婚」した少女も

 逆に、ブレイビク受刑者からビクトリアさんが受け取った返信は2通。他にもあったが、郵便物検閲を担当する刑務所の職員によって没収されたのだと、ビクトリアさんはいう。

 ビクトリアさんとブレイビク受刑者の関係を説明するのは難しい。ブレイビク受刑者の元を訪れたいというビクトリアさんの願いはことごとく拒否され、2人は一度も会ったことがない。

 ビクトリアさんにとって、ブレイビク受刑者は「古くからの友人」であり、守ってあげたい「兄弟のような存在」でもある。異性として魅力を感じる部分もあり「最初は、少なくとも私の側には恋心があった」と語る。

 2人は2007年にオンラインゲームを通じて知り合った。2年後、ブレイビク受刑者はビクトリアさんとの連絡を断ったが、これはおそらく大量殺人の計画に専念するためだったと思われる。

 12年の初めにビクトリアさんは再びブレイビク受刑者と接触できたが、もはやブレイビク受刑者は、ノルウェーで最も嫌悪される人物に変貌していた。

 ファンはビクトリアさんだけではない。ノルウェー紙モルゲンブラーデ(Morgenbladet)によれば、ブレイビク受刑者が受け取る手紙は年間「少なくとも」800通で、大半が女性ファンからのものだという。12年の公判中には、16歳の少女がブレイビクに求婚したことも明らかになった。

「犯罪性愛」(ハイブリストフィリア)は犯罪学の専門家たちが使う用語で、獄中の殺人鬼に性的な魅力を感じる性的嗜好を指す。1930年代に米国で銀行強盗や殺人を繰り返したカップルの名にちなんで「ボニーとクライド症候群(Bonnie and Clyde Syndrome)」とも呼ばれ、時代や国を問わず、こうした人々がいる。そうした「ファン」たちから殺人鬼に、際どいラブレターやセクシーな下着が送られることもある。

 25年間、監禁し続けた自分の娘にレイプを繰り返したオーストリアのヨーゼフ・フリッツル(Josef Fritzl)や、米国の連続殺人犯、チャールズ・マンソン(Charles Manson)にもファンクラブがある。