【9月5日 AFP】イスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」は4日、シリア中部のホムス(Homs)県カルヤタイン(Al-Qaryatain)村で拉致し、拘束していたシリア人キリスト教徒少なくとも15人を解放した。在英の非政府組織(NGO)シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)が公表した。

 同監視団のラミ・アブドル・ラフマン(Rami Abdel Rahman)代表は、「カルヤタインで自宅軟禁されていたキリスト教徒15人が解放され、ファイルーザ(Fayrouzah)に到着した」と語った。

 ISは先月初旬、カルヤタイン村でキリスト教徒を含む少なくとも230人の民間人を拉致していた。アッシリア人権監視団(Assyrian Monitor for Human Rights)もキリスト教徒15人が4日午後にホムス(Homs)市の南東約5キロのファイルーザに到着したことを確認した。

 医療関係者によると、解放された人たちの健康状態は良いという。アブドル・ラフマン氏によると、人質はジズヤ(非イスラム教徒に課される人頭税)を支払った後に解放された。解放された人質には、今年5月にカルヤタインの修道院で拉致されISに拘束されているシリア人カトリックのジャック・ムラド(Jacques Mourad)神父は含まれていない。

 バチカン市国のフィデス(Fides)通信によると、ムラド神父と他のシリア人キリスト教徒は「安定した」状況におり、地元の宗教関係者が解放交渉を行っているという。

 15人の解放に先立ち、ISはカルヤタイン村のキリスト教徒らとの間で「ズィンミーの契約」に署名したと伝えられていた。ズィンミーの契約とはイスラム法治国家に居住する非イスラム教徒にイスラムを信仰しないことを認めるもの。

 IS支持者はインターネットにズィンミーの契約のコピーを公開し、ISの最高指導者のアブバクル・バグダディ(Abu Bakr al-Baghdadi)容疑者が、ISが一方的に樹立した「カリフ制国家」に暮らしているキリスト教徒の安全を保障したことを称賛した。しかし公開されたコピーによると、安全を保障する条件としてズィンミーの契約に一般的なジズヤの支払いとキリスト教徒のシンボルを表示しないことに加え、「ISへの敵対行為に参加しないこと」という項目が付けられていた。

 ISは今年3月にも、同国北東部ハサカ(Hasakeh)県で拉致したアッシリア系キリスト教徒19人を金銭と引き換えに解放している。(c)AFP