■「目に見えない害」

 チェルノブイリ原発事故で放出された放射性物質の量は、広島に投下された原子爆弾の200倍ともいわれる。

 事故による直接の死者は31人とされている。放射能の影響による最終的な死者数については、国連(UN)の諸機関とロシアなどの政府が設置した「チェルノブイリ・フォーラム(Chernobyl Forum)」は最大4000人、国際環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)はウクライナ、ベラルーシ、ロシアで10万~40万人と予想している。

 チェルノブイリ周辺地域に長期間にわたって及ぼされる影響としては、環境への被害に加え、甲状腺がんをはじめとするがん、白血病、心臓疾患、肝臓疾患、奇形、白内障、免疫系の疾患、精神衛生上の問題などが挙げられる。世界保健機関(World Health OrganizationWHO)のウェブサイトよると、チェルノブイリ・フォーラムは精神衛生への影響が「事故により生じた公衆衛生上の問題の中で最大のものだった」と述べている。

 ピニョ氏は、今は健康上の問題を抱えているのは親の世代かもしれないが、「将来はその子供が抱えることになる」と語った。原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UN Scientific Committee on the Effects of Atomic RadiationUNSCEAR)によれば、甲状腺がんと診断された子供はチェルノブイリ周辺地域だけでも6000人を超え、その数は今後、増加すると考えられている。(c)AFP/Brigitte HAGEMANN