■正味の影響はマイナスに

 だがハッチンス教授によると、こうした変化が、相互に関連し合う多種多様な海の生物と化学に対して及ぼす全体的な影響は、予測が難しい上、その管理はさらに困難と思われるという。

 より多くの窒素を得られることは「海からの食糧生産にとってはプラスの発展とみなされるかもしれない」と同教授は説明するが、「全体としては、マイナスがプラスを上回る可能性が高い」とそのリスクについても指摘した。

 例えば、気候変動に対抗することの恩恵などは、問題の規模に圧倒されてしまう。同教授によると、大気中への人為的なCO2の排出量は、恐らく1日に2500万トンと非常に大きいため、化石燃料からの排出量を削減しないままでは、自然界がこれを軽減させる上で効果を示せるものは実質的に皆無なのだという。

 そして、「これらの高CO2適応型シアノバクテリアが、より多くのCO2を吸収する可能性は高いが、地球を救うためにこれに頼るべきかどうかは疑問だ」とも述べている。

 研究チームは、今世紀末に予測されている高CO2濃度を再現した4年半にわたる今回の実験でトリコデスミウムを850世代培養した。

 実験では、窒素固定の効率が急速に上昇し、実験期間を通して高い値が維持された。そして培養物を現在のCO2条件に戻した後も上昇した状態のまま保たれたとしている。(c)AFP/Marlowe HOOD