■産業界の需要、地域との連携

 ロマノスさんは昨年9月から、整備工場での勤務の合間に語学学校にも通っている。メンホッファーさんは弟子の進歩に満足し、笑顔を浮かべる一方で、ロマノスさんと同年代のドイツの若者たちを「怠慢」だと表現する。

 しかし、アウクスブルクで異文化間就職アドバイザーを務めるサイト・デミル(Sait Demir)さんは、正式な手続きに対処せざるを得ない。ロマノスさんの場合、難民申請がまだ受理されていないため、状況がさらに複雑だという。ロマノスさんに現在下りているのは、2年間だけの一時滞在許可だ。月給は675ユーロ(約9万円)。小さな部屋を借りていて、家賃は地元の労働局が払っている。

 デミルさんは労働局や慈善団体と緊密に連携し、今年1月以降、19人の難民を研修生として就職させてきたが「もっと多くできるはずだ」と語る。アウクスブルクの職工協会の研修担当者、フォルカー・ツィンマーマン(Volker Zimmermann)さんによれば、経営者たちは学ぶ意欲があって勤勉な人たちを雇用できる可能性に気付き始めているが、役所での複雑な手続きが壁になっている。その上、難民申請が受理されるまでは、24時間前までの通告でいつでも国外退去させられる可能性が残る。

 しかし、この2年で状況はだいぶ変わったとデミルさんはいう。ドイツの閣僚2人は最近、国内紙への寄稿で、新たに到着する難民は「我々が必要としている労働力」とみなすべきだと述べた。

 これまで亡命希望者は、ドイツに到着してから9か月間、働くことが許されなかった。だが昨年11月、この期間は3か月に短縮された。今年1月以来、連邦当局は6000万人以上の難民に労働許可を発行している。 (c)AFP/Mathilde RICHTER