【9月2日 AFP】ドイツで自動車修理工場を経営するローベルト・メンホッファー(Robert Menhofer)さん(59)は、シリア難民のジョルジュ・ロマノス(George Romanos)さん(21)を研修生として雇い、その働きぶりを称賛している。ドイツでは、メンホッファーさんのように若い難民にチャンスを与えようとする経営者が増えている。「彼は腕のいい整備士になるだろう」とメンホッファーさんはいう。「技術面においては申し分ない」

「けれど理論面では……言葉のせいで問題もある」と、青いつなぎの作業服を着たロマノスさん本人が、控えめに言葉を挟んだ。そのドイツ語は、ドイツに来て初めて学び始めたものだ。

 シリア人でキリスト教徒のロマノスさんは、2013年の春にドイツ南部のバイエルン(Bavaria)州に一人でたどり着いた。その過酷な道のりについて、彼は語りたがらない。

 彼のように内戦を逃れてドイツにやって来たシリア難民は13年初頭以降、8万6000人近くに上る。シリアだけではない。この期間、コソボやアルバニア、他の国・地域からも、欧州一の経済大国が受け入れた難民は計18万人近い。

 難民は快く受け入れられるとは限らない。特にドイツ東部では難民保護施設に対し、醜悪な反対デモが行われている。だが難民たちは、若い労働力を探すのに必死になっている企業からますます求められている存在でもある。少子高齢化が進むドイツでは、特に肉体労働や熟練技能を要する仕事で需要が高まっている。産業界からは、難民を労働市場に参入させやすいよう法律の改定を求める声も増えている。

 バイエルン州の州都ミュンヘン(Munich)から北へ70キロほどの位置にある街アウクスブルク(Augsburg)では、職工協会がもう何年もそうした法改正を求める運動を続けている。アウクスブルクの6月の失業率は4.2%だった。人材が見つかっていない求人が5000件ある。そして、ここでも訓練生の人材不足は深刻だ。

 理論的学習と職場内訓練(OJT)を組み合わせるドイツの二重訓練制度は、十分な数の若者を引きつけなくなっている。昨年は、8万人分もの研修生枠が空席のままだった。

「今では皆、大学へ進学したがるんだ」とメンホッファーさんはいう。だから、ボビンゲン(Bobingen)の難民保護施設に住むロマノスさんに出会い、「車が大好きだ」と聞いたとき、メンホッファーさんはそのチャンスに飛びついた。メンホッファーさんは地元の業界団体の代表として、難民保護施設の住民たちが開催するクリスマス市の支援を頼まれ、ロマノスさんと知り合った。