【9月2日 AFP】黒い肌に、しゃれた服を着ているその人形に、南アフリカの少女たちは夢中になり始めている。彼女の名はMomppy Mpoppy。民族衣装を着せられていることが多いアフリカの他の黒人の人形とは違い、彼女はその一歩先を行っている。

 最新のファッションに身を包み、アフロヘアにティアラを飾ったMomppyは、黒人の子どもたちの自分の外見に対する見方を変える一助になるかもしれない。

 チャイルディッシュ・トレーディング・アンド・マニュファクチャリング(Childish Trading and Manufacturing)の創業者、マイテ・マゴバ(Maite Makgoba)さん(26)は、市場で売られている黒人の人形が「子どもたちに人気がない」と認識してから、同社を設立したとAFPに語った。

「伝統衣装を着ている人形もあり、やぼったくて魅力がなかった。今日の現実とずれている」と、マゴバさんは言う。

 人形は中国で生産されているが、個人の流通業者に配送される前に、スタイルが決められたり梱包されたりするのは、ヨハネスブルク(Johannesburg)にある彼女の小さな作業場だ。

 同社は、人形とおそろいの子ども服も生産している。

「これはただの商売ではない。私たちの浅黒い肌と豊かなアフロヘアはありのままで美しい、という意識を私たちは作り出している」と、マゴバさんは言う。

「人口の大多数が黒人である南アフリカでさえ、人形や雑誌に出てくる人は白人であることが多い。黒人の子どもたちは、自分を反映していない、全てが白人に偏重している世界で育つことになる」

■みんなが同じ見た目ではない

 マゴバさんによれば、2013年に設立したばかりの同社は大手の玩具メーカーとの厳しい競争に直面しているが、買い手からは「驚くほどの反応」があり、励まされているという。

 2人の子どもを持つノーカズラ・マセコ(Nokuthula Maseko)さん(30)は、自分の子どもたちが「珍しい人形に夢中になった」と語る。彼女はソーシャルメディアで同人形のことを知った。ソーシャルメディアは同社最大のマーケティングツールだ。

「美の基準が白人の身体的特徴とつながりやすい世界で、この人形は私の子どもたちに似ていることが気に入った」と、マセコさんは言う。

 しかし、マセコさんは、子どもたちが持っている白人の人形を今すぐ捨てるつもりはないと語る。「子どもたちは学校で白人の友達と遊ぶ。世の中にはさまざまな人種が存在し、みんなが同じ見た目ではないという現実を分かってもらうためだ」

 ヨハネスブルクの児童心理学者メリタ・ヘインズ(Melita Heyns)氏によれば、玩具は子どもに長期的な影響を及ぼす。

「人形はただの遊び道具ではなく、女の子の人生の大きな一部分を占める。だから、こうした玩具が子どもの性格と自尊心の形成を助けるのは重要だ」(c)AFP/Sibongile KHUMALO