【8月26日 AFP】米中西部のボランティア団体で働くマイケル(Michael)さん(匿名)は「死んだ結婚」だったという状態に陥っていた2年前、不倫専用の出会い系サイト「アシュレイ・マディソン(Ashley Madison)」に初めてログインした。特に感心することもなく「入会していたのは3か月くらい」だったという。

 25日、AFPの取材に応じたマイケルさんは「正直言って、あのサイトはひどかった。出会いなんてない。私のように多くのユーザーは意味がないと考えてすぐ退会するのに、向こうはユーザーの情報を消去していなかった」と語った。

 アシュレイ・マディソンがハッキング被害に遭い、自分のアカウント情報が流出して以来、マイケルさんはおびえながら暮らしている。今、同じ境遇の人が約320万人いる。

 マイケルさんは妻と別居し離婚協議中のため、結婚生活が脅かされる心配はないが、子どもや仕事に影響が及ばないかと不安を抱いている。「私の人生のあらゆる分野が台無しになるかもしれない。今はいい仕事に就いているが、職場には信仰心の厚い人が多く、首になるかもしれない。私のしたことは間違っていたし、深く後悔しているが、職を失い、子どもに貧困の危機にさらすなんて罰としてはあんまりだ。得意顔をしているハッカーにも、人の不幸を喜ぶソーシャルメディアも忌々しい」

「人生一度り。不倫をしましょう」という宣伝文句で知られているアシュレイ・マディソン。利用者の個人情報流出による影響は長引く恐れがある。

 被害は有名人にも及んでいる。キリスト教徒の一家でそろってリアリティー番組に出演していた米テレビタレントのジョシュ・ダガー(Josh Duggar)さん(27)は2013年2月以降、同サイトに2つのアカウントを持ち、1000ドル(約11万円)近くを払ってきたことが分かった。10代のころの性的非行も今年、明らかになっダガーさんは「私は最悪の偽善者だ」と声明で述べている。

■救い求める「あらゆる種類の男性」

 インターネットの評判管理を行う企業やPRコンサルタントの電話は、ひっきりなしに鳴っている。

 これまでにアシュレイ・マディソンのユーザー、約50人から連絡を受けたというオンライン情報コンサルタント会社「ステータスラボ(Status Labs)」のメディアディレクター、コートニー・フィッツパトリック(Courtney Fitzpatrick)氏は「あらゆる種類の人からかかってきている。それも全員、男性だ」という。「個人情報窃盗だと訴える人もいれば、浮気を認めながら、自分のしたことを心から後悔していると話す人もいる。一方で、あからさまに不倫しておきながら、妻に発覚することを恐れている人もいる」

 ソーシャルメディアが人間関係に及ぼす影響を研究している、米ロアノーク・カレッジ(Roanoke College)心理学部のデニス・フリードマン(Denise Friedman)学部長は、サイバー空間上に完全な個人情報などないということを、ユーザーたちは身をもって知ったと話す。「ネットに何かを載せるとき、セキュリティーがどれほどしっかりしているように見えても関係ない」。そのサイトを保護しているはずのファイアウォールを突破しようとする人物が常にいるからだという。(c)AFP/Robert MACPHERSON