【8月26日 AFP】オメガ3脂肪酸を多く含む魚油サプリメントは、通説に反して、認知機能低下を抑制する効果はないとする研究結果が25日、発表された。研究は高齢者4000人を対象に行われた。

 今回の研究に資金供与した米国立衛生研究所(US National Institutes of HealthNIH)が発表した声明によると、米国医師会雑誌(Journal of the American Medical AssociationJAMA)に掲載された5年間に及ぶ臨床試験の結果は「この種の研究としては最大かつ最長規模のものの1つ」だという。

 論文執筆者で、NIH傘下の国立眼病研究所(National Eye Institute)臨床副部長のエミリー・チュー(Emily Chew)氏は「世間一般に広まっている通説に反して、オメガ3サプリメントには、認知機能の低下を抑える効果は確認されなかった」と語る。

 オメガ3脂肪酸は魚油などに含まれている。サケ、マグロ、オヒョウなどの魚を定期的に食べる人は、これらの種類の魚を食べない人に比べて、目、心臓、脳などの健康状態が良好であることも示されている。

 だが、オメガ3脂肪酸を錠剤で摂取した場合の結果は同じではない。2011年の先行研究では、一般に販売されているオメガ3サプリメントに、心臓疾患のある高齢患者の脳の健康を向上させる効果はないことが判明している。

 今回の最新研究は、失明の主な原因の1つとされる「加齢黄斑変性」と呼ばれる眼疾患の患者を対象としたものだ。調査対象となった患者は平均年齢72歳の高齢者で、全体の58%が女性だった。

 研究では、対象者を無作為に2グループに分け、一方のグループにプラセボ(偽薬)を、もう一方にはオメガ3脂肪酸──具体的にはドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)──を含む錠剤を摂取させた。

 研究の対象者には、記憶および認知機能のテストを調査開始時に実施。そして、2年後と4年後に同じテストを受けてもらった。

「各グループの認知機能テストの点数は、時間とともに同程度減少した。これは、栄養サプリメントのどの組み合わせも効果を生じないことを示している」と論文は指摘している。

 世界人口の高齢化に伴い、今後数十年でアルツハイマー病患者の急増が予想されている。研究者らはこの最も症例の多い認知症を予防する方法の発見に熱心に取り組んでいる。

 国際アルツハイマー病協会(Alzheimer's Disease InternationalADI)によると、世界の認知症患者数は現在約4700万人に及んでおり、2050年にはこの数字が1億3200万人に達すると予測されているという。(c)AFP