【8月20日 AFP】米国の故ニール・アームストロング(Neil Armstrong)元宇宙飛行士が人類初の月面着陸時に着用した宇宙服を修復することを目的に、米スミソニアン協会(Smithsonian Institution)が立ち上げた初のクラウドファンディングが19日、71万9779ドル(約8916万円)の資金を集めて終了した。

 米クラウドファンディング最大手キックスターター(Kickstarter)による1か月間の「宇宙服を再起動せよ(Reboot the Suit)」キャンペーンは、7月24日の時点で目標額の50万ドル(約6200万円)を突破。最終的には合計9477人から寄付を集めた。

 同協会デジタル慈善活動部門を統括するユンヒュン・リー(Yoonhyung Lee)氏は、米首都ワシントン(Washington D.C.)にあるスミソニアン国立航空宇宙博物館(Smithsonian National Air and Space Museum)で開かれた記者会見で「正直、驚いた」とコメント。「これほど早く目標額に達することも、これほど劇的に目標額を超過することも、どちらも本当に予想外だった。今回はわれわれにとって大成功だった」と述べた。

 スミソニアン協会が、その最も貴重な収蔵品を経年劣化から保護する費用を賄う一助とするために、クラウドファンディングに頼るのは今回が初めてだった。

 キャンペーンは、歴史に残るアポロ11号(Apollo 11)の月面着陸から46周年の記念日にあたる7月20日に始まった。終了日は、航空技術の発展を祝う「航空の日(8月19日)」と重なった。

 資金を手にしたスミソニアン協会は現在、アームストロング元飛行士の白い宇宙服とヘルメットを、2019年の50周年までに一般公開できるようにすることを目指している。

 スミソニアン博物館の3年間に及ぶ修復プロジェクトを監督する学芸員のリサ・ヤング(Lisa Young)氏は、AFPの取材に「この宇宙服は非常にもろい」と話し、「約50年の耐用年数にもうすぐ到達する。素材の多くは、月まで往復する一時的な使用のために作られたものだった」と説明した。

 博物館など19施設を運営するスミソニアン協会は、それらの維持費と収蔵品の安全防護対策のための費用が米国政府から支給されている。だが、展示と修復にかかる費用の大部分は、民間からの寄付に依存している。

 今回のキックスターターのキャンペーンに寄付をした人は、その金額に応じて、米航空宇宙局(NASA)の宇宙ミッションワッペンから、3Dプリンターで製作したアームストロング元飛行士の宇宙服手袋の複製までの記念品として受け取った。

 最高額の1万ドル(約120万円)を寄付した9人は、スミソニアンの航空宇宙関連品保全施設で月面宇宙服を直に見ることができるという。

 アームストロング元宇宙飛行士は3年前の8月、故郷の米オハイオ(Ohio)州で82歳で死去した。(c)AFP/Katharyn GILLAM