【8月19日 AFP】(一部更新)東アフリカで発掘された、185万年前の人類の祖先のものとされる、非常に小さな小指の骨を手掛かりに、これまで発見された中で最古の「現生人類的」な手について解明したとする研究論文が18日、発表された。

 論文執筆者らによると、現生人類の祖先が木登りをする採食者から道具を手にした狩猟者に変化した進化の重要段階は、この小指の骨の発見によってさらに時代をさかのぼることになるという。

 また、今回の発見をめぐっては、現在のタンザニアにある、人類発祥の地の一つとみられている地域に、当時生息していたことが知られているものよりも大型で、より現生人類に近い外見の生物が存在していたことも示唆している。

「手」は、ヒト科生物を区別する重要な解剖学的特徴の一つ。今回発見された、長さ3.6センチの骨の断片は、体格や行動に関する多くの解明を可能にするものだという。

 論文主執筆者のスペイン・アフリカ進化研究所(Institute of Evolution in Africa)研究員、マヌエル・ドミンゲス・ロドリゴ(Manuel Dominguez-Rodrigo)氏は、人類祖先の手の形状は、進化の段階の反映であるとともに、その進化を推し進めた要因そのものでもあると説明する。

 同氏は「手の進化により、人類はさまざまな握り方ができるようになり、霊長類にみられる広範囲の道具の操作を可能にするのに十分な握力を獲得できた」と電子メールで述べた。また「主に道具の発明と使用を通して知能を発達させるために、脳と相互作用したのは、この道具操作能力に他ならない」とも指摘している。

 科学者らが「現生人類的」と呼ぶ手の骨格には、決定的な特徴がいくつかある。

 その一つは、長い親指だ。これにより、従来より正確にものをつかめるようになった上、手のひらをより完全に近い形で大きくに開くことができるようになった。

 もう一つの特徴は、指を構成する3個の骨「指骨」がまっすぐになっていること。湾曲した指骨は、木登りや枝から枝に飛び移るのに適応したものとされる。

「過去の時代における現生人類的な手は、人類が完全な地上生活者になった時期や、人類の祖先が道具を効率的に使用するようになった時期とその効率の程度について知る手掛かりになると思われる」と、ドミンゲス・ロドリゴ氏は説明する。

 人類のこのような変化は、2つの重要段階で起きた。

 最古のホミニン(ヒト族)が約600万年前に直立歩行を始めた後、手は長い親指を進化させた。だが、指は湾曲した状態のままで、木がまだ生息地の一部であったことを示唆している。

 これからさらに400万年間、地上の歩行と木々の枝を渡るこの「2重の移動方式」が一般的である状況が続いた。