【8月18日 AFP】ギリシャ・コス(Kos)島では、戦争や貧困を逃れてきた大勢の難民や移民希望者たちが、廃業したホテルの廃虚を仮住まいに悲惨な日々を送っている。

 ホテル「キャプテン・エリアス(Captain Elias)」跡地では、水の枯れたプールサイドに数十人が座り込んでいるかと思えば、フロントやロビーには床にマットレスを敷いて寝転がる人々がいる。庭には段ボールや木の枝で作ったテントや小屋が所狭しと並び、敷地を囲うフェンスは洗濯物干しとして、周辺の野原はトイレとして使われている。

「この4日間、食べ物をくれた人はいない。誰かが来たとしても、まるで足りない。ここには人が多すぎる」。アフガニスタンのヘラート(Herat)出身の技師、エルシャさん(25)はこう嘆いた。

「誘拐や爆破事件」を逃れてパキスタン、イラン、トルコを経由し、コス島まで辿り着いた。ドイツかスウェーデンに行きたいと話すが、ここまで来るのに密航業者に5000ドル(約62万円)を支払ったため、懐はすっからかんだという。「アフガニスタンでは、男は武装組織に加わって誰かの命令に従うしかない。違う生き方がしたかったんだ」(エルシャさん)

 深刻化する難民問題を、欧州連合(EU)のディミトリス・アブラモプロス(Dimitris Avramopoulos)移民担当委員は14日、「第2次世界大戦(World War II)終結以来最悪の危機」と称した。中でもコス島は、欧州の無秩序な難民対応の象徴と化している。先週には、難民登録申請のため競技場に殺到した人々を警察官が警棒で殴ったり消火器を噴射したりする騒ぎがあった。

 ホテル「キャプテン・エリアス」は正規の難民収容施設ではないため、政府の援助は一切ない。難民たちに手を差し伸べているのは、わずかな地元の人々と観光客だけだ。(c)AFP/Serene ASSIR