■ゲイバーは消えゆく運命?

 同店を歴史的建造物として保護するよう求めている活動家たちによると、この店は昨年、開発業者に売却され、今は閉鎖の危機に直面している。店を買収した開発業者「イモベート(Immovate)」は、パブとしての営業を続けたいとしているものの、採算が取れない事業であり、つぶれないのは自分たちが賃料を要求しないおかげだと指摘。歴史的建造物に指定されれば、保険料が増加し、事態はさらに悪化すると警告している。

 バーの保護を求める運動「RVTフューチャー(RVT Future)」に関わるベン・ウォルターズ(Ben Walters)氏は「開発業者が言う商業的な可能性とは、実のところ、利益の最大化を意味している」と反論。「ロンドン中心部では今、不動産から最大の利益を得ようと思ったら、ゲイパブの経営では、どんなに繁盛したとしても無理だ。マンションや小売店として開発される必要がある」と指摘する。

 ここは確かに歴史的建造物かもしれないが、他のゲイパブやクラブの客数も減少しており、こうした店が今も必要とされているのかと疑問視する声もある。ロンドンは世界有数の同性愛に寛容な都市であり、多くのLGBTが一般の店舗でも歓迎されていると感じている。

「今のようなゲイバーはなくなる運命にある。私自身、ゲイに友好的なバーに行けば、昔ながらのゲイバーと同じくらい居心地の良さを感じる」と、公務員のフェルナンド・フォルモソ(Fernando Formoso)さん(42)は言う。

 デートやセックスの相手を求めてゲイパブを飲み歩く時代はもう終わりつつある。出会い系アプリを使えば無数の出会いがあるからだ。「オンラインのほうが安いし便利だ。家を出る必要がない」と、IT講師のマイク・ペティット(Mike Pettet)さん(41)は言う。