【8月12日 AFP】モダンな集合住宅が立ち並ぶオーストリアの首都ウィーン(Vienna)15区の緑に覆われた一角で、新鮮なフルーツやニワトコの花から作った飲み物、手作りマフィンなどをそれぞれが持ち寄り、楽しそうにおしゃべりをするある「会」が開かれた──。

 この会に参加したのは、最近、語学教師になるための訓練を受け始めたばかりのソーシャルワーカーや30代半ばの女優、指圧師とその息子など、その顔ぶれは実にさまざまだ。そして特記すべきは、数時間前まで、全員が見ず知らずの「ご近所さん」だったということだ。

 この会の参加者は、近くにいるユーザー同士を結ぶソーシャル・メディア「フラッグ・ニブナン(Frag Nebenan、隣人に聞こう)」を通じて知り合った。同サービスは、指定した範囲内にいる人とつながることを目的としている。15区で開催された「会」では、範囲が750メートルに設定され、その範囲内での利用者同士がつながった。

 フラッグ・ニブナンはいわゆる「フェイスブック症候群」に対抗するSNSだ。グローバルに友達を集めていくのではなく、地元の人たちとの関係を築き、隣人のことを知ることに重点を置いている。このような動きは最近、フランスやドイツ、米国でも広がりをみせている。

 フラッグ・ニブナンには、2014年5月のサービス開始直後から、あらゆる世代からの支持が集まった。すでに1万2500人以上が登録しており、現在でも毎週400人前後が新規に登録しているという。

 マリアンネ・グラムスルさん(74)は、同じ建物に住む愛想の悪い年配女性に不満を抱いたのがきっかけとなり同サービスに登録したのだという。「階段で会うたびに挨拶しても返事がないということがもう何年も続いていた。これはちゃんと挨拶をしたい人を見つけるのにぴったり」とコメントした。

 創始者のシュテファン・タイスバッハー(Stefan Theissbacher)さん(33)は、人口170万人のウィーンは、都市としては決して大きくないが、ここでも「都会の孤独」が問題になり得ると話す。タイスバッハーさんはAFPに「目指しているのは『近所』を地域社会に変えること。近隣の人同士で親友になりましょうということではなく、自分の他に隣人もいて、助け合いも可能だというのを知るべきだ」と語った。