■大部分はクローンによって繁殖

 それまで、生物個体の大部分は、現在のイチゴやオリヅルランと同様に、走茎と呼ばれるほふく性の茎から形成されるクローンだった。

 地球史のこの時点──5億8000万年前~5億4100万年前のエディアカラ紀──まで、生物はこのような方法で増えていった。明確な性分化がみられる動植物は、その後の「カンブリア爆発(Cambrian Explosion)」期に初めて登場した。

 だが、フラクトフズスが海底のある地域から別の地域までどのようにして到達したのかについては、クローン生殖では説明できなかった。ここから事態は興味深い方向へと進む。

 新たな生息地への最初の移住者らは、珠芽(しゅが)と呼ばれる生物組織の形で到達した。

 これら1ミリに満たない極小の芽は、クローンと異なり、独立した個体で、遠距離移動が可能だった。さらには、おそらく火山灰の降下などで生息環境が乱された結果として、ごくまれにしか生成されなかったとミッチェル氏は説明。そして「この幼体は、親と分かれて生きる能力を持つ、独立した新個体だ」と指摘している。

 珠芽は、無性的に生じた可能性がある。「だが、珠芽が有性生殖で発生したとすると、フラクトフズスは、大型生物による有性生殖の最古の例になるだろう」とミッチェル氏は述べている。(c)AFP