【8月10日 AFP】35年前の夏の夜、地中海(Mediterranean)の島国キプロス沖合で沈没し、水深40メートルの海底に横たわる鋼鉄製の巨艦が、世界屈指の沈船ダイビングの名所として多くのダイバーでにぎわっている。

「地中海のタイタニック(Titanic)号」とも呼ばれるスウェーデンのフェリー「ゼノビア(Zenobia)」号の沈没地点は、毎年何万人ものダイバーたちを集め、紅海(Red Sea)やアジア、オーストラリア沖のダイビングスポットと比べても引けを取らない、欧州一の沈船ダイビングスポットとなった。

 レジャー向けダイビングを扱う英国の会社で働き、毎年6月末に開催されるプロモーションイベント「ゼノビア・ウィーク(Zenobia Week)」のためにキプロスを訪れたマット・ハウエル(Mat Howell)氏は、「(船は)とても大きいので、数日間ダイビングをしても飽きることはない」と説明する。

 また、多くの沈没船の場合と違い、ゼノビア号はキプロスのリゾート地ラルナカ(Larnaca)から船でわずか10分というアクセスしやすい環境にある。

 ゼノビア号は、1912年に大西洋(Atlantic)で沈没したタイタニック号と同じく、シリアのタルトス(Tartus)港へと向かう初航海の途上で沈没した。

 1980年6月2日の午前0時過ぎ頃、ゼノビア号の船長はSOS信号を発信。キプロスからトロール漁船が救助に駆けつけ、犠牲者は出なかったものの、5日後にゼノビア号は沈没した。沈没の原因はいまだ分かっていない。