【7月28日 AFP】(写真追加)タイムカプセルのように、60年もの間土の中で眠っていたトンネル施設「ファン・ベイ・ディープ・シェルター(Fan Bay Deep Shelter)」がこのたび、一般公開された。このトンネルは第2次世界大戦(World War II)中、英国防衛の最前線として、ドーバー(Dover)にあるホワイトクリフ(White Cliffs)内に掘られたものだ。

 ホワイトクリフの内部23メートルの深さに掘られたこのトンネルには、兵士185人と将校4人が駐屯し、砲台3基を担当していた。トンネルの掘削作業が始まったのは1940年7月。ウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)首相(当時)がドーバーを訪問し、敵国ナチス・ドイツの艦船が英仏海峡を我が物顔で行き来しているのを見て、激怒したのを受けてのことだ。当時、フランスはナチス・ドイツの占領下にあった。

 広さ325平方メートルのこのトンネルは、1950年代に放棄された。1970年代にはがれきで埋められ、唯一の手がかりは草に覆われた崖の上にあるメタルプレートだけとなった。

■生き生きとよみがえる兵士らの暮らしぶり

 2012年、自然や景観の保全活動を行う英民間団体ナショナル・トラスト(National Trust)がホワイトクリフの区画を購入し、このトンネルを再発見。トンネルの再生に向けたプロジェクトに取りかかった。

 このプロジェクトに参加したボランティアたちが、忘れられて久しい兵士たちの生活の痕跡を大量に発見した。たばこの箱、電報、間に合わせでつくられた洋服を掛けるフック、サッカーくじの券、ライフルの銃弾などなど。エアダクトの上には、1903年発行のわいせつな海洋冒険小説が隠されていた。白亜の壁には落書きが描かれている。たいていは部隊名だ。

 この再生プロジェクトにより、ホワイトクリフの絶壁に作り付けられた第1次世界大戦(World War I)時の貴重な音響ミラーも発見された。レーダーが発明されるまでは、音を集めることのできるこの直径4.6メートルの円が凹型に彫られたこのミラーが、航空機や艦船、敵の砲撃の襲来する方角を知らせる早期警報システムとして使われていた。(c)AFP/Robin MILLARD