■クマの「孤児院」も

 ヒグマはルーマニアで一般的な動物で、生息個体数は6000頭ほど。山岳地帯の村では、子連れのクマが出没しゴミをあさることもしばしばだ。チョトロシュさんによると、保護区にいるクマたちは既に本能の大部分を失い、「食料や雌のために戦ったり、森の中で生き抜いたりできない」ため、2度と野生に戻ることはできない。

 保護区とは別の先駆的プロジェクトとして、ザルネシュティから北へ約200キロの場所にあるハシュマシュ(Hasmas)山岳地帯にある施設では、事故や人為的な原因で母親を失った子グマが育てられている。

「クマの子は、2~3歳になるまでとてもか弱く繊細だ」と、同プロジェクトの創設者で動物愛護活動家のレオナルド・ベレスキー(Leonardo Bereczky)さんは言う。クマの子たちは保護されているだけでなく、食べ物を探す方法を学ぶなど、いつかは自立できるように育てられているという。これまでに約100頭が野生に返された。

 チョトロシュさんによると、カルパティア山脈地域では1990年から2000年にかけ、多くのレストランが観光客を呼び込むためにクマを檻に入れ見せものにしていた。だが動物虐待を規制する法律の厳格化により、最近はあまり見られなくなり、「今ではルーマニアで救出を待っているクマは十数頭以下だ」という。(c)AFP/Mihaela RODINA