米先住民の集団移動、シベリア経由で1回のみの可能性 研究
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■オーストラレーシアとの関連
論文主執筆者の一人、マーナサ・ラガバン(Maanasa Raghavan)氏は「今回の研究は、米大陸の遺伝的先史時代に関する、これまでで最も包括的な全体像を提示するものだ」と語る。
ラガバン氏は、「アメリンディアンとアサバスカンの主要サブグループを含む全ての米先住民は、米大陸に渡った同一の移住者集団の子孫であることを、今回の研究は示している」と述べ、北米北極圏のパレオ・エスキモー(Paleo-Eskimo)やイヌイット(Inuit)などの民族を発生させることとなった後の時代の移住者集団とは明確に異なると続けた。
研究チームは、また、米大陸での人類の存在を示す最古の証拠が1万5000年前のものであることを考えると、最初期の祖先が最終的に米大陸に流入するまでのベーリング地峡にとどまっていた期間は、最大で8000年続いた可能性があると指摘している。
一部の従来の研究では、このベーリング地峡で孤立していた期間を数万年とする説も提唱されているが、この8000年はそれよりはるかに短い。
今日存在が知られているさまざまな民族集団への多様化は、祖先が米大陸に足を踏み入れる前ではなく、到達した後に初めて起きたとされる。
ネイチャー誌に発表された別の研究では、南米アマゾン(Amazon)の先住民の一部は、現代で仲間とされるアメリカ先住民より、オーストラリア、ニューギニア島(New Guinea)、インド洋アンダマン諸島(Andaman Islands)などの先住民に近い近縁関係にある祖先の系統を引いていることが分かったとされた。
アメリカ先住民がユーラシア(Eurasia)大陸からやってきたとすると、初期米先住民の骨格の一部が、現在のオーストラレーシア(オーストラリア、ニュージーランド、周辺の島々の総称)の人々と共通の特徴を持っている理由についても説明できることになる。
だが、この祖先がいつ、どのようにして米大陸にやってきたかは依然として「未解決の問題」だと論文は指摘している。(c)AFP/Mariette LE ROUX