【7月29日 AFP】インドネシアのスマトラ(Sumatra)島北部、同国で唯一、イスラム法(シャリーア、Sharia)が導入されているアチェ(Aceh)州で、「不道徳な行為」を行った者に対する公開むち打ち刑が増えている。州都バンダアチェ(Banda Aceh)での公開むち打ち刑を、ヌルディン・ハサン(Nurdin Hasan)氏が取材した。

■大津波以降「目覚めた」シャリーア

 その若い女性が崩れ落ちたのは、むち打ち刑そのもののせいだったのか、群衆の面前で罰せられる恥辱に耐えかねてのことだったのか、本当のところは分からない。金曜礼拝の後、バンダアチェ中心部のモスクの外に建てられたやぐらの上で、むちで4回打たれ気を失うと、大学生の彼女はシャリーア警察によってやぐらから下ろされた。

 その日、やぐらに立たされたのは、彼女だけではなかった。他に5人の大学生──全員未婚で年齢は18~23歳──と40代の女性1人が、シャリーア警察と検察官によって群衆の前に連れ出された。彼らは頭を垂れ、中には群衆の目と野次を避けるために顔を手で覆う男性もいた。40代の女性は不貞行為で罰せられた。大学生のカップルたちも二人きりでいたためにシャリーア警察に捕まった。

 アチェでは婚外で性的な関係を持つことが禁止されている。世界で最も多くのイスラム教徒を抱えるイスラム大国のインドネシアだが、他の地域ではそうした関係は認められている。しかし国内で唯一シャリーアが適用されている信心深いこの州では許されていない。

 アチェは2001年、長年の独立運動の鎮静化を目指したインドネシア政府との合意の中で、一定の自治権を認められた。その中には、シャリーア法を導入する権利も含まれていた。

 2004年のスマトラ沖地震の際にアチェを襲った壊滅的な津波で、インドネシアでは約17万人が死亡し、周辺国でも数万人が犠牲になった。このインド洋大津波を機に、インドネシア政府と分離独立派の間で和平を求める気運が高まり、合意が結ばれた。以来、アチェは広範な自治権を保持し、シャリーアに基づく多くの規制を着々と導入していった。