■チェンユアンロンの翼は何のため?

 それは、飛行のためではない可能性が高い。チェンユアンロンは、空を飛ぶには体が大きすぎ、腕も短すぎたからだ。

 翼は誇示行動や、巣の中で卵を守るために使われたのかもしれないと、研究チームは推測している。「このことは、翼が当初より、飛行のためではなく、他の機能のために進化したことを意味するのかもしれない」とブルサット氏は指摘する。「数年前は、大きな羽毛と翼は飛行のために進化したと大半の古生物学者らが口を揃えていたと思う。だが今は、もはやどうだか分からなくなっている」

 これまでの研究では、ヴェロキラプトルの腕の化石に羽軸の付着点があるのが確認されていたが、実際の羽毛は見つかっておらず、羽毛の種類や大きさ、何のためにあるのかなどは不明だった。「チェンユアンロンに関しては、幸運だった。化石が発見されたのが、恐竜が火山によって埋められ、羽毛の細部がそのまま保存された地域だったからだ」とブルサット氏は説明する。

 同氏によると、チェンユアンロンを調べることで、ヴェロキラプトルの羽毛がどのような外見をしていた可能性が高いかを知ることができるという。それによると、ヴェロキラプトルはチェンユアンロンに似た羽毛を持ち、腕に大きな翼があったとみられるという。

 また、ヴェロキラプトルの大きさについて同氏は、チェンユアンロンより少し小さく、「映画で描かれた姿よりもはるかに小型で、プードル犬程度の大きさしかなかった」ようだと話している。

 最初の鳥は1億5000万年前に出現し、小型の羽毛恐竜の子孫だったと古生物学者らは考えている。(c)AFP/Mariette LE ROUX