【7月15日 AFP】スイスにある世界最大の粒子加速器「大型ハドロン衝突型加速器(Large Hadron ColliderLHC)」の科学者チームは14日、「ペンタクォーク」と呼ばれる粒子の存在を初めて確認したと発表した。

 ペンタクォークの存在は、1960年代より物理学者らによって理論化されていたが、これまで実証が得られていなかった。世界で最も出力が高い粒子加速器LHCの実験チーム「LHCb」は今回、ペンタクォークの検出に初めて成功したという。

 ペンタクォークの発見に先立つ2012年、LHCは万物に質量を与えるとされる「ヒッグス粒子(Higgs boson)」の存在を証明するために使用された。

 LHCb広報担当のギュイ・ウィルキンソン(Guy Wilkinson)氏によると、ペンタクォークは「50年以上に及ぶ実験的探求でこれまでに一度も観察されたことのないパターン」で複数のクォークを組み合わせる方法の一つを表すものだという。クォークは、陽子や中性子を構成する素粒子群。

「ペンタクォークの性質を調べることで、この世界を形成している通常の物質、陽子や中性子がどのように構成されているかに関する理解を深めることが可能になるかもしれない」と同氏は続けた。

 LHCを運用する欧州合同原子核研究機構(European Organisation for Nuclear ResearchCERN)は、声明で「物質の構造に関するわれわれの理解に大変革が起きたのは、1964年に米国人物理学者のマレー・ゲルマン(Murray Gell-Mann)氏が、クォークと呼ばれる分数の電荷を持つ3種類の素粒子で陽子や中性子を含むバリオン(重粒子)として知られる粒子グループが構成されているとの説を提唱したときだ」と述べた。

 1969年のノーベル物理学賞(Nobel Prize in Physics)を受賞したゲルマン氏はさらに、「クォークと反クォーク」の対で構成されるもう一つの素粒子グループ、中間子(メソン)についても提唱している。

 この同氏のモデルにより、クォークの別の組み合わせの存在も可能となった。その一つがペンタクォークで、クォーク4つと反クォーク1つで構成される。だが、ペンタクォークの決定的な証拠は、これまで一度も確認されていなかった。

 LHCbの実験では、科学者らが「ペンタクォークをさまざまな観点から詳細に探す」ことができたため、大変革をもたらすことになったとCERNは説明している。

 今回の成果は、米国物理学会(American Physical Society)の学会誌「Physical Review Letters」に投稿された。

 研究の次の段階では、ペンタクォーク内で5つのクォークがどのように結合しているかの調査に重点的に取り組む予定とCERNは続けた。(c)AFP