■旧ソ連の伝統「学校で軍事訓練」

 ハルツイスクで行われている子ども向けの軍事訓練は「愛国ドンバス(Patriotic Donbass)」という組織が行っている。ドンバスとは、親露派が「ドネツク人民共和国」として一方的に独立を宣言しているドネツクとルガンスク(Lugansk)を含むドン川(Don River)流域の斜陽工業地帯を指す地元の呼称だ。

 愛国ドンバスのリーダー、ユーリ・ツプカ(Yury Tsupka)氏(53)は、戦闘地域で志願兵として戦っているウクライナ民族主義者たちを軽蔑している。ツプカ氏は、旧ソビエト連邦時代に学校で軍事技術を教えていた伝統を復権させたいだけだと語る。

 ツプカ氏によれば親露派制圧地域では最近、このような軍事クラブを設ける学校が増えており、付近の町だけでも他に4校があるという。しかし、単純な訓練を行っているところだけではない。中には、親露派の拠点ドネツクから東へ20キロほど広がる地雷地帯に駐屯する、ハルツイスクの分離独立派部隊に実際に入隊する生徒もいる。

■「もう血は怖くない」

 アーニャとカティヤは、重い戦闘用ブーツを履きなれた、愛想のいい双子の姉妹だ。2人はまだ19歳の時に通っていた技術大学を中退し、地元の民兵部隊に入隊するという人生を変える決断を下したことをまったく後悔している様子はない。

 入隊について「ママははじめ、許してくれなかったわ」とアーニャは話す。しかし母親も次第に折れ、やがて姉妹に付き添って、戦線で負傷した戦闘員たちの手当てを手伝いに出かけるようになった。カティヤは「戦争の前は、血の臭いが怖かった。でも、もう血を怖いと思うことはなくなったわ」と話した。

 ユニセフによれば、ウクライナ紛争が始まった昨年3月以降、少なくとも68人の子どもが死亡し、180人の子どもが負傷した。残虐な紛争は、ソ連崩壊後もスラブ民族同士として比較的平和に共存していたロシア系とウクライナ系の双方に家族の分裂を引き起こし、心の傷を残している。(c)AFP/Yulia SILINA