【7月1日 AFP】キューバは6月30日、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)と梅毒の母子感染を撲滅した世界初の国になった。世界保健機関(World Health OrganizationWHO)が発表した。

 発表にあたり、WHOのマーガレット・チャン(Margaret Chan)事務局長は「ウイルスの伝染撲滅は、公衆衛生上達成可能な最大の功績の一つ」とコメント。そして「これは、HIVと性感染症との長年にわたる闘いにおける大きな勝利であり、AIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)のない世代の実現に向けた重要な一歩だ」と述べた。

 この成功をもたらした要因として、国民皆保険制度、検査の利用機会の向上、母体の健康管理に対する関心の高まりなどがあると考えられている。

 衛生保健当局は、HIVや梅毒の母子感染発生率が生児出生10万件に50件を下回る場合を成功と定義しているが、HIVの母子感染を防ぐ抗レトロウイルス治療の有効性は100%ではない。そのため、成功の確証が得られてとしても、少数の感染例が残るのはやむを得ないとされている。

 今回の成功について、WHOと汎米保健機構(Pan-American Health OrganizationPAHO)は、「もはや公衆衛生問題にならない程度の低水準に感染が減少した」と説明した。

 WHOの声明によると、衛生保健当局は2010年より「出産前健康管理、妊婦とそのパートナーのHIVと梅毒の検査、検査が陽性だった女性とその子どもへの治療、帝王切開分娩や母乳代用品などを早期に利用できるようにする」ための取り組みをキューバで行ってきたという。

 世界では、毎年140万人のHIVに感染した女性が妊娠しているとされる。未治療の場合、妊娠や分娩、授乳によって母体のHIVが子どもに感染する確率は15~45%だ。だが、抗レトロウイルス薬を母親と子どもの両方に投与すれば、母子感染リスクはわずか1%強となる。

 HIVに感染した新生児は2009年に40万人を数えたが、この数字は2013年に24万人にまで減少した。

 だが、2015年までに新生児の新規感染数を年間4万人以下にするとした世界規模の目標達成には、集中した取り組みが必要と衛生保健当局は指摘する。

 国連(UN)合同エイズ計画(UNAIDS)のミシェル・シディベ(Michel Sidibe)事務局長は「AIDSの流行を終わらせることは可能であることが示された」としながら、伝染の撲滅成功に向け、キューバ以外の国も前向きに取り組んでほしいと呼びかけた。(c)AFP