【6月30日 AFP】米連邦最高裁判所は29日、受刑者に激しい苦痛を与えるとして議論を呼んでいる薬物注射による死刑執行について、合憲との判決を下した。

 判事9人のうち5人が、執行に使用される鎮静剤ミダゾラムに「激痛をもたらす大きな危険性」があることを原告団が示せなかったと判断。「残酷で異常な刑罰」を禁じた憲法には違反していないとの見方を示した。

 米最高裁は既に2008年に薬物注射による死刑執行を合憲と判断していたが、その後、使用する薬物の提供を欧州などのメーカー側が拒否。代替薬物としてミダゾラムなどによる混合薬物が使われるようになったものの、死刑執行の失敗とみられる事例が相次ぎ、米オクラホマ(Oklahoma)州の死刑囚らで作る原告団が最高裁の判断を仰いでいた。

 米国は欧米先進国で唯一死刑制度を廃止していないが、今回の最高裁判決によって米国内の死刑廃止運動は一歩後退したことになる。

 ミダゾラム混合薬物による死刑失敗例としては昨年4月にオクラホマ州で、殺人、強姦、誘拐の罪で死刑判決を受けたクレイトン・ロケット(Clayton Lockett)死刑囚が、薬物投与から43分間もがき苦しんで絶命している。

 米最高裁は26日に全州で同性婚を合法とみなす歴史的な判決を下したばかりだが、今回の判決は、最高裁判事の間に存在する保守派とリベラル派の深い溝を改めて示す結果となった。(c)AFP/Chantal VALERY, Robert MACPHERSON