■進化の手掛かりに

 分析の結果、ハルキゲニアの頭部で見つかった口は、リング状に並ぶ先のとがった歯で囲まれていることが分かった。これは、餌を吸い上げるために使われたと思われる。一方、食道には、針状の歯が1列に並んでいた。これは、食べたものが逆流するのを防ぐためのものだった可能性がある。

 体長が1~5センチほどの、とげのよろいを着たハルキゲニアは「カンブリア爆発(Cambrian Explosion)」と呼ばれる地球史の時代に生息していた。主要な動物種の大半は、この時代に出現した。

 ハルキゲニアは、1970年代に初めて特定された。最も近い現存する近縁種は、歯のないカギムシだ。カギムシは「脱皮動物」と呼ばれる分類に属している。脱皮動物には、多くの昆虫や線虫、ロブスター、クモなどの外骨格を脱皮する動物などがいる。

 ハルキゲニアの歯を新たに発見したことで、スミス氏とカロン氏の研究チームは、脱皮動物の祖先も歯のある口と食道を持っていたに違いないと結論付けた。

「もしそうであれば、これは非常に興味深い。生物分類群の発生時期を制約する助けになるからだ」とスミス氏は指摘する。

 このことは、脱皮動物の下位分類群がすべて「地質学的に短い2000万年の急速進化の期間内に」分岐したことを示し、急速に進行した「カンブリア爆発」の証拠を提供しているように思われると同氏は話している。

 ハルキゲニアの歩く様子を再現した動画は、以下のリンクで見ることができる: https://youtu.be/Gny9SxByOw8

(c)Mariette LE ROUX