■「与えられるべき社会的地位」

 活動家のウー・グイジュンさんが、製造業の中核である広東省深セン(Shenzhen)に13年前に来たときには、月給数百元という低賃金にもかかわらず、ストライキなどほとんど聞いたこともなかった。「労働者は一人一人であがいていて、自分たちの権利を守ることについては、ほとんど話していなかった」という。

 現在、地方から深セン市に出稼ぎにくる労働者の月給は平均2864元(約5万7000円)と、2013年から10%上昇している。労働者たちは意欲に燃えていると、ウーさんはいう。「生活水準が高まり、与えられてしかるべき社会的な地位を求め始めている」

 ウーさんは13年に勤務していた家具工場の突然の閉鎖で、従業員たちの抗議を率いて以来、労働運動家となった。ストライキや職場放棄の組織は中国で合法だが、「公共秩序混乱を目的とする集会」を組織したとして、起訴が取り下げられるまで1年間勾留されたことがある。現在は労働者の権利擁護団体を立ち上げ、若い労働者たちにストライキの戦術や、ソーシャルメディアの活用の仕方などを助言している。警察からは常に嫌がらせや拘束の脅迫を受けているが、構わない。

 当局は、統治を正当化する重要な要素として一般の人々の生活水準を上げることと、当局幹部と密接なつながりを持っていることが多い地元産業に、健全な利益を確保することの間でジレンマに直面している。同時に彼らは、社会の混乱を嫌い、経済成長を望んでいる。だが中国は労働コストにおいて、他のアジア諸国との激しい競争にさらされてもいる。

 格差が広がる中、中国政府は過去10年の間に、雇用主による社会保険料や工場移転に伴う補償金の支払いなど、労働者の権利を守るための画期的な法案をいくつも可決した。しかし靴工場のライドは、当局が誰の味方かをよく知っている。「政府はただ、私たち従業員に圧力をかけてくる。雇用主を代弁しているんだ」と勤続10年以上の従業員はいう。一方、どの企業も警察も、AFPの取材依頼に対してコメントしようとしなかった。

 6日間のストライキの後、ライドの従業員たちは、十分な譲歩を引き出せたとして仕事へ戻った。「私たちは基本的には求めていたものを手にした」と、ある女性従業員は語った。「でも給料はまだ低いから、満足はできない」(c)AFP/Tom HANCOCK