【6月10日 AFP】野生のチンパンジーたちが興じるヤシ酒の「飲み会」が、進化についての理論を理解するための一助となったとする論文が、9日の英国王立協会(Royal Society)のオンライン科学誌「ロイヤルソサエティー・オープンサイエンス(Royal Society Open Science)」に発表された。

 オックスフォード・ブルックス大学(Oxford Brookes University)のキンバリー・ホッキングス(Kimberley Hockings)氏率いる研究チームが執筆した論文によると、西アフリカ・ギニアのチンパンジーたちは、地元住民が乳状の甘い樹液を採取するために穴を開けたラフィアヤシの木に芳醇な「宝物」をみつけた。樹液が発酵してできたアルコールだ。

 チンパンジーたちは、住民らがヤシの木の樹冠部近くに設置した樹液収集用の容器に、口の中でつぶしてスポンジ状にした葉を浸してアルコールを摂取する。やし酒のアルコール濃度は3.1%~6.9%までと開きがあった。強いものでは、度数の強いビールに相当するという。

 動物がアルコールを摂取するケースはこれまでもよく知られている。発酵したリンゴを食べて酔うスウェーデンのヘラジカや、カリブ海の島セントキッツ(St. Kitts)で観光客のカクテルを盗み飲むサルなどがその例として挙げられる。

 だが、17年にわたるギニア・ ボッソウ(Bossou)村での観察により、野生のチンパンジーたちがいつ、どの程度のアルコール摂取量で酔うのかについてのデータが初めて入手できた。ここでは、しばしば親しい仲間とともにヤシの木の樹上に集まって「飲み会」が開かれるという。

 論文によると、17年間で記録されたチンパンジーのアルコール摂取回数は51回で、うち20回は「飲み会」形式だったとされる。また参加していたチンパンジー13頭が特定されており、ここには若いチンパンジーも含まれていたという。

 今回の研究結果は、類人猿と人類が、アルコールを分解できる遺伝的な特質を共通の祖先から受け継いで共有しているとの理論を支持するものだ。

 この理論では、我々の先祖はアルコールを代謝することで、地面に落ちて発酵した果物類を食べることができるようになったとされ、その結果、貴重なカロリーおよびビタミン類の摂取源をさらに獲得したと考えられている。(c)AFP