■「困窮とは呼べないがぎりぎり」

 食品の廃棄が当たり前となっている現状を目の当たりにしたデランバーシュ氏は、食料を必要としている多くの人々が、羞恥心や資格に相当しないという理由から、フードバンク(困窮者向けの食料配給)に行かないことを知って行動を起こした。

「困窮とは呼べない程度には稼いでいるんだ」というデランバーシュ氏によれば、フランスの労働者階級は最低1500ユーロ(約21万円)程度の月給を受け取っているが、それでやりくりするのに苦心している。

 一方、デランバーシュ氏が大手スーパーチェーンを訪ね、貧困者に配るために一日の終わりに売れ残った食品をもらえないかと打診したところ、断られた。店側は「(売れ残り)食品を漂白剤に漬ける方がいい」のだという。これは、店のごみ捨て場あさりをさせないための対策で、店側は廃棄処分した食品を食べた誰かが具合を悪くし、訴えられることを恐れているのだという。

 デランバーシュ氏は別のスーパーからようやく許可をもらい、アイデアが成功したことから署名運動を思いついた。「まるで映画の『フォレスト・ガンプ(Forrest Gump)』みたいに始めはたった一人で走っていたが、今では大勢が私に合流している」

 売れ残り食品を慈善団体に寄付することをスーパーマーケットに義務付けている地域は、世界では他にベルギー南部しかない。

 人間の食用に生産される食品の3分の1が、浪費または廃棄されているとする国連(UN)の統計を受けて、食品廃棄の取り締まりに向けた全世界の取り組みは加速している。