【6月21日 AFP】創造物を見下ろす神のように、中国の建築模型製作者たちはそこに立っていた。しかし、10年続いた不動産ブームが終わり、縮小するなか、彼らの野心もついにしぼみ始めている。

 中国は人類史上最速の都市化を経験してきた。2011~13年の間に使用されたセメントの量は、20世紀に米国で使用されたセメントの量を上回り、2010年までの10年間に建てられた住宅は、英国全体の既存住宅戸数の2倍に上るといわれる。同じ期間、大都市の住宅価格は3倍まで上昇し、マンションの入居希望者は土台さえ築かれる前に先を争って購入した。

 一方で不動産デベロッパーたちは、きらびやかな自社ショールームに展示するための精巧な建築模型を、専門家たちを投入して作ってきた。プロジェクト資金を住宅購入者から調達する手段として「ただ模型を見せて住宅を売ることだってできた」と北京大学(Peking University)の経済学者、朱国鐘(Zhu Guozhong)氏はいう。

 しかし本物の住宅もその模型も、ここへ来て需要が落ちている。広東(Guangdong)省深セン(Shenzhen)にある建築模型製作会社「キャニオン・モデル(Canyon Models)」のワン・ガンさんは、「5年前に比べ、私たちが作っている建築模型の数は大幅に減っている」と語る。かたわらでは同僚たちが、プラスチックでできた豪華マンションの一室に極小の家具を差し入れたり、「小人の国」のキッチンにシンクを設置したりしている。

 不動産販売の失速を招いたのは過剰建築と、バブル回避を目的とした政府の住宅購入規制だ。大都市の不動産価格は過去12か月中10か月で下落。デベロッパーの下には、空き住戸や建設しかけのビルがだぶつき、新規プロジェクトは保留された。

 キャニオン・モデルの「現場」監督者、ウェン・ジュンさんは、果てしなく広がる「商業エリア」の前に立つ。一寸大の買い物客や広告──すべて卓上サイズにできている。

「不動産市場が活況を見せ始めたころは、たくさんの住宅模型を作っていた」という。「今はこうした商業地区開発の(模型の)方が多い。照明も使って本物そっくりにしている。どれも細部まで完璧だ」

 さらにジュンさんは「最近は、アラブ首長国連邦(UAE)やドバイのための模型が多い。そちらの方が需要があるからだ。次はブラジル、それから東南アジア諸国だろうね」と述べた。(c)AFP/Tom HANCOCK