【6月8日 AFP】イタリア・セリエAのACミラン(AC Milan)の株式取得で合意したと言われているタイの実業家ビー・テチャウボン(Bee Taechaubol)氏が7日、今後「2か月」以内に株式48パーセントを取得すると話した。

 その一方で同氏は、今回の取引に関して、一連の「でっち上げと推測」に基づいた報道があったとしてイタリアのメディアを批判している。

 イタリアメディアから「ミスター・ビー」と呼ばれる同氏は先週、クラブオーナーにして会長のシルビオ・ベルルスコーニ(Silvio Berlusconi)氏と8週間の独占交渉を行う契約に署名した。

 ミランが発表した声明によれば、ベルルスコーニ氏は52パーセントの株式を引き続き保持する。一方、東南アジアで企業グループのエグゼクティブ・ディレクターを務めるテチャウボン氏は、残り48パーセントを4億8000万ユーロ(約670億円)で買い取る。

 今回の件については、テチャウボン氏のミランへの関心を疑問視する報道がたびたび出ていた。ミランは同都市のライバルであるインテル(Inter Milan)とともに、来季の欧州カップ戦出場を逃している。

 また、中には同氏がシニシャ・ミハイロビッチ(Sinisa Mihajlovic)氏の指揮官招へいに難色を示しているという報道もあった。現役時代にインテルやラツィオ(SS Lazio)などでもプレーしたミハイロビッチ氏は、先日サンプドリア(Sampdoria)の指揮官を退任し、フィリッポ・インザーギ(Filippo Inzaghi)監督に代わってミランの新指揮官に就任するとのうわさが広まっている。

 しかし、テチャウボン氏はこの件について自分がコメントしたことは一度もないと話し、監督人事は「ベルルスコーニ会長とそのスタッフが扱うべきこと」と強調した。

 さらに同氏は、ビクトル・パブロ・ダナ(Victor Pablo Dana)氏への批判も行っている。ガゼッタ・デロ・スポルト(Gazzetta dello Sport)紙は、同氏の働きで「ビー氏のプロジェクトは完了した」、「ビー氏側が(ベルルスコーニ氏の所有する)フィニンベスト(Fininvest)社とコンタクトを取った」と報じていた。

 しかし、この日同紙のウェブサイトに掲載された、公式声明文とされるものによれば、すでに数か月の交渉を行っているものの、取引はあと「2か月の懸命な努力」を重ねた末にようやくまとまるものだという。

 またテチャウボン氏は声明で、「私がクラブへ加わることは、ベルルスコーニ氏とミラン、ミランのブランドにとっての成功であり、アジア市場でのミランの地位を確固たるものにするはずだ」と述べている。

「これから2か月は、この取引に全力を注ぐ。これ以上のコメントはしない。今は働くべき時であって、おしゃべりの時ではない」

 ベルルスコーニ氏の判断でトップレベルの選手が売却され、さらにベテランたちもチームを去った2012年の夏以降、没落の一途をたどるミランだが、取引が成立すればクラブは大きな武器を手にできる可能性がある。

 欧州を7度制しているミランは、今シーズンは10位でリーグ戦を終え、欧州カップ戦としては格の落ちるヨーロッパリーグ(UEFA Europa League)の出場すら逃した。

 このところは、ファンもたびたびチームへの不満をあらわにするようになっており、インテルと共用している8万人収容の本拠地サン・シーロ・スタジアム(San Siro stadium)は、普段から3分の1以下しか埋まらず、対戦相手が小規模クラブの場合はさらに観客が少ない。

 2か月前には、ファンが空席ばかりのスタジアムで「ゲームオーバー」、「コインを投入してACミランを救って」と書かれた巨大な横断幕を掲げ、低迷するクラブに抗議の意思を伝えた。

 クラブに対しても影響力を持つ過激なサポーター、通称「ウルトラス」が、テチャウボン氏の参画をどう受け止めるかは、まだ定かではない。(c)AFP/Justin DAVIS