【5月31日 AFP】太陽光のみをエネルギー源とする世界一周飛行に挑んでいる次世代ソーラー飛行機「ソーラー・インパルス2(Solar Impulse 2Si2)」が31日未明、米ハワイ(Hawaii)に向けて中国の南京(Nanjing)を離陸した。太平洋(Pacific Ocean)上空を6日6晩飛行する予定になっており、今回の世界一周で飛行距離が最も長く、最も野心的な区間だ。

 アンドレ・ボルシュベルク(Andre Borschberg)氏が操縦する同機は、安全上の懸念から飛行に適した気象条件になるのを待った後、31日午前2時40分(日本時間同3時40分)ごろ離陸した。プロジェクトの関係者らによると、約8500キロという飛行距離は単独のパイロットによるものとしては過去最長記録となるという。

 今年3月にアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビ(Abu Dhabi)を出発したソーラー・インパルス2は、全航程を12の区画に分け、飛行時間約25日で世界一周する計画。

 ソーラー・インパルス2は3月31日にミャンマーから中国の重慶(Chongqing)に到着した。すぐに南京に向かう予定だったが、気象条件の問題で数週間重慶に足止めされ、中国国内に2か月間とどまる結果となった。現在の飛行計画によると、今のところ台風の危険はない。

 ソーラー・インパルス2の最高飛行速度は時速140キロで、通常のジェット機よりもはるかに遅いが海上を航行する船よりは速いため、ハワイまでの飛行に船は随伴しない。もし飛行中に事故があれば救助隊の拠点から数百キロも離れた海上にパラシュートで降下することになる。

 しかしボルシュベルク氏はAFPの先の取材に「リスキーだとは思っていない」と話していた。「最悪の場合、パラシュートと救命いかだを使うことになる。もちろん、そういったことをせずに済むことを望んでいるが」

 飛行計画立案時には技術的トラブルが発生すれば日本国内の空港に着陸する必要があるとされていたが、ボルシュベルク氏は「この辺りから出てしまえばあとは外洋だ。戻って来ることはできない」と語っていた。(c)AFP/Bill SAVADOVE