【6月1日 AFP】フランスの裁判所は5月28日、「ロレアル(L'Oreal)」の女性相続人リリアンヌ・ベタンクール(Liliane Bettencourt)氏の親しい友人ら8人が、ベタンクール氏の不安定な精神状況につけこんで利益を得たとして有罪判決を言い渡した。うち一人には1億5800万ユーロ(約215億円)の返金命令が下された。

 ベタンクール氏の親しい友人であり、俳優ジョニー・デップ(Johnny Depp)の娘の名づけ親としても知られる写真家のフランソワ・マリー・バニエ(Francois-Marie Banier)被告(67歳)は禁錮3年を言い渡されたが、内6月については執行猶予付の判決となった。

 ベタンクール氏の莫大な財産を監督していた2人の男性、パトリス・ドメストル(Patrice de Maistre)被告とその相続人パスカル・ビレルム被告には、それぞれ禁錮30月(内12月は執行猶予付き判決)と25万ユーロ(約3400万円)の罰金が科された。

 裁判は今年1月、被告ら10人がベタンクール氏を不当に利用しているとの訴えを受けて始まった。ベタンクール氏をめぐっては2006年から混合型認知症と「中等度」のアルツハイマー病を患っているとして、2011年に財産を管理できる状態にないとの判断が下されている。

 ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)前大統領までもを巻き込んだこの複雑な騒動は、ベタンクール氏の夫アンドレ氏の亡き後、ベタンクール氏の心神耗弱に付け込んだとして、2007年に娘のフランソワ氏がバニエ氏を告訴したことから始まった。

 米フォーブス誌の世界富豪番付で10位に入る資産家のベタンクール氏は、バニエ被告を唯一の相続人とし、約4億ユーロ(約540億円)の価値があるとされる絵画や現金数百万ユーロなどを渡していた。

 ベタンクール氏の娘は裁判で、バニエ被告が「詐欺師」であり、彼女と母親との関係を悪化させたと証言した。一方のバニエ被告は、各地に不動産を複数所有もしていると述べ「リリアンヌ・ベタンクール氏をよく知る前から」資産と金を持っていたと主張。また「彼女は人に金をあげるのが好きだった」としながら、ベテンクール氏と知り合った際、彼女は精神的に落ち込んではいなかったと述べた。