【5月28日 AFP】人類学者らは1974年、約320万年前に地球を闊歩(かっぽ)していた、人間に似た生物の化石をエチオピアで発見した──初期人類の骨格化石「ルーシー(Lucy)」だ。

 ルーシーをめぐっては、「現生人類ホモ・サピエンス(Homo sapiens)の直系の祖先なのか?」「一部の説が大々的に主張する通り、彼女は『人類の母』なのだろうか?」といった疑問が常に取り巻いており、これに疑念を抱く人々からの攻撃に常にさらされてきた。否定派はケニアやチャドで発見された古代人類の化石の存在を指摘するが、いずれも決定的なものではなかった。

 だが、27日に発表された新発見の化石に関する研究結果は、これまで主流説に決定的な一撃を与える可能性がある。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された今回の論文によると、ルーシーが生息していたのと同時代、同じエチオピア・アファール(Afar)地方に、別種のヒト科動物が生息していた可能性があるというのだ。

 化石の発見者らは、「アウストラロピテクス・デイレメダ(Australopithecus deyiremeda)」と命名されたこのヒト科動物およびルーシーについて、現生人類の直系祖先の「より広範囲の候補群の一部」にすぎないと論文で指摘した。現地の言葉で、デイレメダは「近親者」を意味するという。

「この新種は、ルーシーが属するアウストラロピテクス・アファレンシス(アファール猿人、Australopithecus afarensis)が、現在のアファール地方に相当する地域に生息していた、人類の祖先となる可能性のある唯一の種ではないことの、もう一つの確証となる」と指摘するのは、米クリーブランド自然史博物館(Cleveland Museum of Natural History)のヨハネス・ハイレ・セラシエ(Yohannes Haile-Selassie)氏。

 同氏はまた「同じ時代に、地理的に近接した地域に生息していた初期のヒト科動物種が、3種とまではいかなくても、少なくとも2種存在したことを、現在の化石証拠は明確に示している」と説明した。

 アファール地方のウォランソ・ミル(Woranso-Mille)地域で発見されたアウストラロピテクス・デイレメダの化石は、上顎と下顎の骨で、年代は330万年~350万年前と特定された。

 これは、290万年~380万年前とされるルーシーの推定年代の範囲と重なる。

 論文によると、今回の骨はルーシーのものとは明らかに異なり、歯の大きさ、形状、エナメル質の厚みなどに違いがみられ、下顎もより頑丈になっているという。(c)AFP/Richard INGHAM