【5月29日 AFP】スウェーデンの首都ストックホルム(Stockholm)の緑豊かな郊外にある小さなベージュ色の建物にアトリエを構えるデザイナーのマリア・スヨディン(Maria Sjodin)さん(46)は、シックなデザインの服に最後の仕上げを施している。実はこの服は意外な顧客のために作られている――女性聖職者たちだ。

 この分野の草分けの一人であるスヨディンさんは、女性聖職者向けの洗練されたオーダーメード服を製作している。七分袖やトランペット袖、あるいは凝ったカフスなどをあしらった、控えめさを大事にしながら程よくフィットする黒のトップスやワンピース。全身を黒でまとめたスヨディンさんは、自らのコレクションを披露しながらこう語った。「私は女性たちの姿を思い浮かべながら、デザインしています」

 顧客たちもそこに満足している。ストックホルム市内から来たベアトリス・ロンクイスト(Beatrice Lonnquist)牧師は「(通常、女性牧師も着る)他の服は男性用で、女性用のカットではないのです」と語る。

 スヨディンさんは自らのコレクション「カジュアル・プリースト(Casual Priest)」で、女性聖職者のための普段着を提案しており、主なアイテムはトップスやワンピース。祭服(礼拝などで着る典礼用のローブ)は含まれていない。大半のアイテムが黒だが、着る人の位階によっては別の色で作ることもある。例えばスウェーデンのルーテル教会の執事は、緑のトップスやワンピースを着ることができる。

 スヨディンさんは2002年、女性の聖職者向けに特化した服がないことを知り、ひらめいたという。「信心深い環境で育ったわけではなく、ある若い女性牧師に会った時に、女性聖職者のために作られた服はほとんどなく、何を着ても着心地の良いものがないと聞いたんです」。そこでスヨディンさんは、彼女たちのために襟をあしらったTシャツを作り、それがコレクション第一号となった。現在は袖を工夫したり新しい素材を使ったりと、定期的にアレンジを加えている。

 スヨディンさんの最初の顧客が同僚たちに新しいトップスを見せたところ、売れ行きが伸び始めた。まずスウェーデンとノルウェーで知られるようになり、その後、ドイツや英国にも広がった。「最初に作ったトップス『エヴァ』は、今でもベストセラーアイテムです」とスヨディンさん。男性聖職者からも声が掛かるようになり、小規模ながらメンズラインも展開している。