■「自分を表現する権利」をかけた闘い

 下着姿で身をよじることが違法だとは思ってもみなかったと、カンシメさんは言う。

「あのミュージックビデオを作ったとき、子供たちに見せようなどとは全く思っていなかった。あれは大人向けに作ったもの」。首都カンパラ(Kampala)にあるトタン屋根の簡素な小屋のような自宅でAFPの取材に応じたカンシメさんは、ブラジャーをチラ見せしたヒョウ柄のミニ丈ドレス姿で説明した。「私の人権と自由は、踏みにじられた」

 カンシメさんの弁護士は今回の裁判について、ウガンダのアーティストたちの「自分を表現する権利」をかけた闘いだと主張する。「開かれた自由な社会には、エロチックなエンターテインメントの権利が存在するスペースがなくてはならない」

 カンシメさん逮捕のきっかけは、神父出身のサイモン・ロコド(Simon Lokodo)倫理担当相が問題のミュージックビデオを見て衝撃を受けたことだった。米歌手リアーナさんをも激しく非難するロコド氏は、カンシメさんのビデオは「とてもひわいで、わいせつ」だと酷評。自身と倫理担当省の「情報員」たちが歌手たちの監視活動を行っていると豪語し、さらなる検挙を警告した。

 ポルノ規制の強化に力を入れるロコド氏は今年に入り、売春あっせん業者の逮捕を警察に命じたほか、地元テレビで人気のデート番組を売春行為と呼んだり、地元報道によれば丈の短いスカートで議会に出席したウガンダ最年少議員に抗議したりしている。

 カンシメさんの弁護士は、倫理担当省はもっと重要な取り組むべき問題を無視していると批判。「社会の退廃は売春から始まるわけでも、売春で終わるわけでもない。問題は汚職だ。だが、倫理担当省には何の解決策もなく、だから弱者を標的にするのだ」 (c)AFP/Amy FALLON