【5月25日 AFP】100歳の現役ダンサー、アイリーン・クレイマー(Eileen Kramer)さんは、人生を大いに楽しむ世界最高齢の、少なくともオーストラリアで最も高齢の現役ダンサーで振付師だろう。彼女は今年、ダンサーとして3本のミュージックビデオに出演している。

 豪シドニー(Sydney)でのミュージックビデオの撮影リハーサルに姿を現したクレイマーさんは、「年なんて気にしていない。100歳なのよ!」と笑い、「私はもう解放されたの。常に35歳でいる必要なんてないわ」と続けた。

 彼女との会話では話題が尽きることはない。パリ(Paris)のカフェで哲学者ジャンポール・サルトル(Jean-Paul Sartre)の話を盗み聞きしたこと、有名な画家たちのためにモデルを務めたこと、ジャズミュージシャンのルイ・アームストロング(Louis Armstrong)からツイストを教わったことなど、次から次へと湧き出てくる。

 クレイマーさんの人生に転機が訪れたのは24歳のとき。ゲルトルード・ボデンビーザー(Gertrud Bodenwieser)さん率いるバレエ団の公演を見て、バレエレッスンを受けることを決意したことがきっかけとなったのだという。ボデンビーザーさんは、ナチスの迫害を逃れ、コロンビアを経由してオーストラリアに移住したダンサーだ。

 試験に合格し、同バレエ団からレッスンを受けることになったクレイマーさんは、レッスン初日に「解放感」を味わったことを覚えているという。そして、3年足らずで同カンパニーのメンバーとなった。

 ボデンビーザー・バレエ団は、その名称とは裏腹に、オーストラリア初のモダンダンス・カンパニーとしての評価が高い。クレイマーさんは、クラシックバレエの訓練を受けた経験がなかったが、このカンパニーでの活動を通じ、その才能を次々と開花させていった。

 バレエの練習は今でも毎日欠かさないという。大半の日は朝起きて、寝室でくつろぎながら行うだけだとしながらも「それでも、起き上がって色々な練習をするのよ。クラシックバレエのエクササイズの中には、脚に力を付けるのにとても向いているものもあるの。私は片方の目が悪くてバランスが取れないから、そういう練習が必要なのよ」と説明した。

 明るい色の口紅と自分で仕立てたという鮮やかなオレンジ色のドレスを着てインタビューに応じたクレイマーさん。ボデンビーザーの一員として参加した各国の公演を振り返り、その一例として、フランスのディエップ(Dieppe)での出来事を語った。当時のパートナーで映画監督のバルーク・シャドミ(Baruch Shadmi)さんが、移動の待ち時間にカジノで遊んでいたので、クレイマーさんは踊るためにダンスホールを訪れた。するとそこには世界的ミュージシャンのルイ・アームストロングが座っていたという。「踊っていたのは私だけで、ツイストがうまくできずにいたら、彼は教えてくれたわ」とその時のやりとりについて述べた。