【5月25日 AFP】第2次世界大戦(World War II)中にウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)首相(当時)の戦時内閣が執務室として使用した英ロンドン(London)の旧地下鉄駅が、モダンなバーやギャラリーに生まれ変わることになりそうだ。

 ロンドン中心部の高級地区メイフェア(Mayfai)にひっそり存在する1907年開業のダウンストリート(Down Street)駅は、閉鎖されてから83年間、ちりの積もるまま放置されてきた。駅名の標識は失われて久しいが、かつて世界最古の地下鉄の各駅の壁を彩った真紅のタイルは開業当時から変わらない。

 ロンドン市交通局(Transport for LondonTfL)はこのほど、ダウンストリート駅を皮切りに、市内に7~8か所ある閉鎖された地下鉄駅を商業スペースとして貸し出す計画を打ちだした。担当者は「歴史や立地、独特の空間を活用する利用法が見つかれば素晴らしい」と語る。

 ダウンストリート駅は先の大戦中、英鉄道局の臨時本部として使用された後、ナチス・ドイツ(Nazi)の空襲を避けるための戦時執務室がホワイトホール(Whitehall)の地下に完成するまでチャーチル首相の戦時内閣が置かれた。駅構内にはチャーチル首相と側近らが使用したキッチンや居間、バスルームが今も残る。隅に置き去りにされた電話線の山は、当時の通信本部の名残と考えられている。

 商業用に貸し出されるスペースは約400平方メートル。建築事務所からはトンネルを店舗として活用する案の他、商業施設に最も有望な場所として広さ156平方メートルのエレベーターシャフト跡をミニシアター、レストランやバー、ブティックなどに転換する案が提示されている。関係者によれば、幽霊博物館やワインセラー、美術品の倉庫として利用する提案もあるという。

 TfL担当者の話では、来月22日の企画案締め切りを前に投資家100人ほどが興味を示しており、1年半~2年後をめどに商業施設としての開業を目指す。(c)AFP/Maureen COFFLARD