【5月22日 AFP】イスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」は21日、シリア政府の統治下にあった最後の対イラク国境検問所を制圧した。ISは今週、シリア中部の古代都市パルミラ(Palmyra)やイラク・アンバル(Anbar)州の州都ラマディ(Ramadi)を相次いで掌握。シリア国土のおよそ半分を支配下に置き、両国をまたいで一方的に樹立を宣言した「カリフ制国家」をさらに強固なものとした。

 ISは、シリア・ダマスカス(Damascus)とイラク・バグダッド(Baghdad)の両首都を結ぶ高速道路が通るアルタナフ(Al-Tanaf)・アルワリド(Al-Walid)間の国境検問所を制圧。これによりシリア・イラク国境の検問所は、北部でクルド人が掌握している短い区間を除いて、すべてISの掌握下となった。

 ISはインターネット上で、古代都市パルミラの完全制圧を宣言、市内の軍空港や刑務所に立ち入るイスラム国の戦闘員らの姿を捉えた動画や写真を投稿した。ISはこれまでにイラクで遺跡の破壊行為を繰り返しており、世界遺産に登録されているパルミラの遺跡も同じ運命をたどる恐れが高まっている。

 バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は、一連のISによる攻勢について、米国が主導する有志国連合による対IS作戦が戦術的「後退」を喫したことを認めた一方で、連合軍がISに「負けている」わけではないと強調した。

 だがフランスのシリア専門家、ファブリス・バランシュ(Fabrice Balanche)氏は「ISは今や、交通上最も重要なシリア中部を支配した」と述べ、首都ダマスカスや中部ホムス(Homs)に攻勢をかけられるようになったと指摘。「パルミラを制圧したことでダマスカスとホムスへの進路が開かれた」と語った。(c)AFP