【AFP記者コラム】「10分以内に家を出ろ!」命がけのイエメン紛争取材
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【5月26日 AFP】世界の最貧国の一つが流血の内戦に陥っている。イランが支援するイスラム教シーア派(Shiite)系反政府武装勢力フーシ派(Huthis)と、それに対する大統領派の民兵組織、そこへ国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系の「アラビア半島のアルカイダ(Al-Qaeda in the Arabian Peninsula、AQAP)」とスンニ派(Sunni)の過激派組織「イスラム国(Islamic State、IS)」の両方が加わり、さらにサウジアラビア主導のスンニ派連合軍が入り乱れる。
激化するイエメンの紛争は複雑かつ混迷を極めている。そして現地を取材するジャーナリストたちは常に危険と隣り合わせだ。
3月31日の夕方、南部の都市アデン(Aden)に駐在する29歳のAFP特派員ファワズ・ハイダリ(Fawaz al-Haidari)は、アブドラボ・マンスール・ハディ(Abd-Rabbo Mansur Hadi)暫定大統領派の民兵組織のリーダーから内密に警告を受けた。「10分後にあなたの家は爆撃される」
情報は正確だったことが証明された。フーシ派に先日制圧されたばかりのアデンの入り口にあるダール・サード(Dar Saad)地区は、ファワズが避難すると同時にサウジアラビア軍の空爆に遭った。着の身着のまま家を出たファワズは、妻と父親と一緒にアデンの北の郊外、バサティーン(Basateen)に住む友人宅へ身を寄せた。そこも安全ではなかった。一晩中、銃撃戦は続いた。戦闘員たちの多くはチャットという麻薬の葉をかみ、興奮状態だった。翌朝、ファワズは自宅へ戻り、わずかな持ち物を手にすると親類たちと一緒にアデンを離れ、その北にある都市タイズ(Taez)へと逃れた。
その混乱の中でも、ファワズは24時間休むことなく、イエメン南部から私たちに信頼できる情報を送り続けてくれた。戦闘勃発以来、多くの民間人犠牲者を出してきたアデンにいる軍の将校や幹部、医師、活動家や、他の地域にもいる情報源のおかげで、4月2日にAQAPが南部沿岸の都市ムカラ(Mukalla)を攻撃し、その混乱に乗じて自分たちの指導者を含む300人以上の囚人を刑務所から解放した事件を、ファワズはどこよりも早く報じることができた。2010年からAFPの特派員であるファワズは、AQAPについて熟知している。
ファワズの同僚である映像記者のナビル・ハッサン(Nabil Hassan)とカメラマンのサレハ・オベイディ(Saleh Al-Obeidi)は今もアデンにとどまり、命を危険にさらしながら日夜、イエメン第2の都市の窮状について報告を送り続けている。彼らが撮った映像や写真は世界中で使われている。
首都サヌア(Sanaa)には、特派員のジャマル・ジャビリ(Jamal Al-Jabiri)がいる。サヌアでは、イエメンの広範囲を制圧したフーシ派の拠点を標的とし、サウジアラビア軍主導の空爆が始まった。それから10日目の4月6日、空爆開始以来、最も静かだった夜の翌朝、彼は安堵(あんど)した住民の様子を報じた。サヌア一帯は空爆に身をすくめている。しかし、ジャマルは毎日街へ出て紛争の悲惨さを伝えている。彼の取材は、人間的な視点という重要な要素を我々の報道に与えている。
35歳のジャマルは、2009年からAFPの仕事をしている。3月20日にサヌアのモスク2か所が自爆攻撃を受け、142人が死亡、351人が負傷したとき、彼は現場にいた。この攻撃については、ISが犯行声明を出している。
アラビア半島を担当するAFPのドバイ支局から見ると、ジャマルはまるで寝ていないかのようだ。夜遅くに記事が投げ込まれ、翌朝にわれわれが出勤する前にはまた、イエメン北部の前夜の情勢をくまなくたどった多くのメールが届いている。