【5月21日 AFP】南仏カンヌ(Cannes)で開催中の第68回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で20日夜、露骨な性描写を多く含むギャスパー・ノエ(Gaspar Noe)監督の3D映画『Love(原題)』が上映され、物議を醸している。

『Love』は、若いカップルの激しい恋愛模様を、想像力を働かせる余地のないほどにあからさまな性描写で捉えた作品だ。射精の接写、乱交、3P、女装姿で売春する男性など、きわどいシーンが連続する。

 すでにポスターの時点から、『Love』は注目を集めていた。そのうちの1つは、射精後の男性器の写真を使ったものだ。

 深夜のプレミア上映には大勢が詰めかけたため、チケットを保有する数十人が入場を拒否され、劇場の外では口論が巻き起こった。

 観客らは上映終了の際に長時間のスタンディングオベーションで歓迎したが、一方で評論家たちの多くは、ノエ監督の「血と精液と涙」というビジョンに共感しなかったようだ。

 英誌リトル・ホワイト・ライズ(Little White Lies)のソフィー・カウフマン(Sophie Kaufman)氏はツイッター(Twitter)に「まるでひどいセックスのように、クライマックスも終わりも分からないまま(映画が)永遠に続くかのようだ」との論評を投稿した。

 アルゼンチン人でフランス在住のノエ監督は、この作品によって「だれもが愛の営みを好きなのに、通常の映画にはあからさまにエロティックなシーンを入れてはならないという、ばかげた区分け」を乗り越えたかったと語っていた。

 だが『Love』に対するツイッター上の評価は否定的なものが大半となった。英国放送協会(BBC)の映画評論家、ジェーソン・ソロモンズ(Jason Solomons)氏は「『Love』は全くポルノ映画とは言えなかった──セリフがその域に達していなかった」と酷評した。

 ノエ監督の作品が物議を醸すのはこれが初めてではない。2002年、カンヌで行われた『アレックス(Irreversible)』の上映の際には、あまりに過激なレイプシーンに耐えられない観客が続出し、数台の救急車が呼ばれる騒動となった。(c)AFP/Eric RANDOLPH