【5月20日 AFP】日本の沖合に出現した真新しい島は、何もない地に生命が定着していく過程を研究するまたとない機会をもたらしている。この母なる自然の大実験の口火を切る秘密の材料となるのが、鳥の排せつ物だという。

 2013年11月、東京の南約1000キロの太平洋上に頭を出したこの小さな陸地。その後も溶岩を流出し続け、ついにはその近傍の小笠原諸島に属する西之島(Nishinoshima、東京都小笠原村)をのみ込んだ。小笠原諸島は生態系の豊かさと多様性で知られる。

 2月に実施された海上保安庁(Japan Coast Guard)の調査によると、西之島全体の面積はサッカー場約345面分に当たる約2.46平方キロメートルに拡大した。今のところ、ほぼ全てが溶岩が冷え固まった岩で覆われている。

 だが、この「自然の実験場」にもいつか自然が入り込み、植物で覆われることになる、ことによると動物でにぎわう可能性もあると科学者らは指摘する。

「われわれ生物学者は大変注目している。進化の過程のスタート地点を目撃することができるからだ」と首都大学東京の可知直毅(Naoki Kachi)教授(同大小笠原研究委員会委員長)は語る。

 火山活動が沈静化すると、まずは海流に運ばれたり、鳥の足に付着するなどして植物が到来することになるという。海鳥が西之島で羽を休め、いずれは巣を作る可能性もある。また、こうした鳥たちの排せつ物や落とした羽根、吐き出した食べ物、死骸などがゆくゆくは豊かな土壌となり、風や鳥がもたらす種を育てる。

「一番関心があるのは、鳥がどのように植物のエコシステムに影響するかということ。鳥の体が運んできたものが有機肥料となり植物にとっては豊かな土を作る一方、彼らの活動が植生のかく乱要因にもなる。こういったことが全体としてどう働くか」と可知教授は話す。

 0.22平方キロメートルしかなかった火山活動開始以前の西之島(旧西之島)は、海鳥の集団繁殖地だった。わずかに見える旧西之島の火山灰に覆われた植物の合間には、数こそ少ないものの今でも海鳥が巣を作っている。