【5月16日 AFP】シリア中部の古代遺跡パルミラ(Palmyra)近くの村で15日、イスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」が子ども9人を含む住民23人を「処刑」した。英国に拠点を置く非政府組織(NGO)シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)が明らかにした。

 同団体のラミ・アブドル・ラフマン(Rami Abdel Rahman)代表がAFPに語ったところによると、パルミラ北方にあるアミリヤ(Amiriyeh)でシリア政府職員の家族など少なくとも23人が銃殺された。このうち9人は子どもだという。

 パルミラは国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産に登録されている古代都市で、アラビア語ではタドモル(Tadmor)とも呼ばれる。

 シリア人権監視団によれば、既にISはパルミラから1キロメートル圏内まで侵攻しており、ユネスコのイリナ・ボコバ(Irina Bokova)事務局長は「強い危惧」を示すとともに、2000年の歴史を持つパルミラを守る決断を下すよう国連安全保障理事会(UN Security Council)に働きかけていくと述べた。

 過去にISはイラクの古代遺跡ニムルド(Nimrud)とハトラ(Hatra)を破壊した映像を公開している。このため、ISに制圧されればパルミラも破壊される可能性が高い。

 シリアの反体制派「シリア国民連合」(Syrian National CoalitionSNC)も、ISがパルミラを破壊するならば「文明に対する罪」を犯すものだと批判する一方で、パルミラ防御態勢が十分になされていないと非難の矛先をシリア政府にも向けた。

 パルミラ防御に向けてシリア政府は15日、同地に追加部隊を派遣しており、ラフマン代表によれば周辺地域に空爆を行っているという。

 ISがパルミラ侵攻を開始した13日朝から、これまでに政府軍兵士73人、IS戦闘員65人の死亡が報告されている。またISは政府側に協力したとして14日までに市民26人を「処刑」。このうち10人は斬首による殺害だった。(c)AFP/Rana Moussaoui、 Karim Abou Merhi