【5月14日 AFP】イスラム過激派組織「ボコ・ハラム(Boko Haram)」に誘拐された経験を持つデボラ(Deborah)さん(19)は、4月末にナイジェリア政府軍によって救出された女性と少女ら275人に対して、何を伝えるべきかをしっかりと認識している──。

 デボラさんは昨年4月14日にナイジェリア北東部ボルノ(Borno)州チボク(Chibok)の学校で拉致された女子生徒276人の1人。「皆でお祈りをした後、自分達を虐待した人たちを許そうと伝えたい。人を許せば、神は私たちのことも許してくださるから」と語る。

 デボラさんを含む57人は誘拐された後、どうにか脱走できたが、他の女子生徒219人の行方は未だに分かっていない。

 57人のうちデボラさんを含めた21人は現在、北東部アダマワ(Adamawa)州の州都ヨラ(Yola)にある大学「American University of Nigeria、AUN」で学んでいる。ボコ・ハラムに誘拐されたために受けることができなかった試験へと向けて準備中だ。デボラさんと友人らによると、すべて整った同大学と故郷の古びた教育施設とでは、学ぶための環境がまったく違うという。故郷では電力供給も不安定で、携帯電話の通信網は長期間使えなくなったままだと話す。

 デボラさんと、一緒に逃れてきたブレッシングさんとメアリーさんの3人は、4月に救出された275人が直面している現状および精神的状態が手に取るように分かるという。3人は今後、避難生活を送っているヨラ郊外のキャンプで支援活動をしたいと考えていると述べ、「私たちは支援できる立場にある。かつて同じような境遇に置かれていたのだから」と続けた。

 ボコ・ハラムの襲撃から逃れ、ヨラに避難してきた数十万人の難民は依然、厳しい状況に置かれている。人道的にも深刻な状況で、村や町が破壊され、農地は荒廃し、食糧不足の恐れも高まっている。

 こうした中、AUNで学ぶチボク出身の彼女たちの下に、未来へと向けた思いがけないチャンスが訪れた。チボクでの誘拐事件が世界中で報道されたことをきっかけに、大学での教育費や寮費、食費などのための寄付が集まっているのだ。マーギー・エンサイン(Margee Ensign)学長によると、最近では、57人全員分の寄付の申し出があったという。

 教育環境恵まれたと感じている3人は、それぞれ未来の目標に向かって歩み始めた。デボラさんは環境保健の分野で活躍したいと考えており、ブレッシングさんとメアリーさんは医師になって故郷のチボクのために働く目標を掲げている。(c)AFP